蔵馬で140字劇場
桑原は逃げ込んだコンビニの軒下で、水を吸ってしおれた頭をガシガシとかいた。濡れた制服が肌に張り付いて気持ち悪い。ハンカチの一つでもと鞄を漁るが、無いものは無い。
「蔵馬……ブッ」
隣の蔵馬に声をかけて吹き出した。自分もひどいが、コイツも大概だ。
「水も滴る、というヤツですよ」
「自分で言うか?」
「お互い風邪ひかないといいですね」
降り続ける雨を見上げて、そーだな、と溜息を吐いた。
お題:水も滴るいい蔵馬
私は蔵馬に恋してる。彼の一挙手一投足に笑って、不安になって、ときどき泣いて。それでも喜んでいる私は馬鹿なんじゃないかと呆れるもする。
「何してるの?」
「さぁ?」
たまには彼も盲目になって欲しい。なんて物理的に目隠しなんかしちゃう私は、本当に馬鹿だと思う。
お題:恋は盲目
幽助「どうしたんだ? この酔っ払い」
ぼたん「あんた達が席を外してる時に絡まれちまってねぇ。公衆の面前で力を使うわけにはいかないから、手近にあったネクタイを使ったんだよ」
桑原「だからってこの縛り方はねぇだろ、女王様かww」
蔵馬「女王様って誰のことですか?」
桑原(お前かー!)
お題:ネクタイと蔵馬
「血はなぜ赤いと思う?」
「知るか」
そういうものだという認識しかなかった黒鵺はそっけなく言い放った。そんな彼を他所に、蔵馬は口角を釣り上げた。
「華々しく着飾るためだ」
と事も無げにいう。彼の植物に食まれ続ける妖怪が声を上げた。鮮やかな鮮血がどす黒く染まっていく様子に黒鵺は目を細めた。
「オレ達の最期も、盛大に着飾りたいもんだな」
お題:赤と黒
「いつも秀一がお世話になってます」
「いえいえ〜、ウチのバカ息子こそいっつも蔵馬くんにはお世話になってましてねぇ」
「くらま、ですか?」
「か、母さん、アダ名だよ。アダ名」
「へぇ、秀一がアダ名を付けて貰えるなんてねぇ」
フフフと笑う母と、桜の下で騒ぎ立てる仲間たち。蔵馬は困ったような、気恥ずかしいような、ひどく複雑な顔で笑った。
お題:蔵馬と桜
捉えた気配の方を向くことなく髪に手を入れる。妖気を流すと、弾けるように成長した。3、2、1……。
「チェックメイト」
タイミングを合わせて腕を振るう。手応えを感じた目標物の確認後、痛みを感じる掌に視線を落とした。
「……木から落ちたようですね」
棘で流れた血を舐め取り、クスリと笑った。
お題:蔵馬も木から落ちる