城のエントランスには民が呼ばれていた。先日の魔王軍との戦いでのグレイグの戦績が評価され、それを称える物だ。
ルーナ自身はその戦いに直接的な力になることはできなかったが、衛生兵として怪我をした兵士をひたすら回復魔法で癒していた。戦いの最前線にいたグレイグはそれはそれはすごい戦いぶりを見せたらしい。魔物達の注意を自身にひきつけ攻撃を一身に受けながらも、魔物達をばっさばっさと切り伏せていたと、出陣していた兵士が興奮ぎみに話しているのを聞いた。
しかし、その話の中にホメロスの話題が出てくることはほとんどなかった。ホメロスもホメロスで悪くない戦いではあったらしいのだが、グレイグよりは目立たず、その戦績はかき消されてしまっていた。
「もうすぐだね」
「あぁ、そうだな」
もう間もなくグレイグが入場してくる。おめでとうと祝福するためにルーナはホメロスと共に待っていた。
わぁっ!と入口の方から歓声が響く。誇らしげな顔をしたグレイグが入場してきた。喜びが隠せないという雰囲気が滲み出ているグレイグを見て、ルーナも口が緩んだ。
ホメロスはグレイグに手を差し出した。友の戦果を祝福するために。
ーーしかしその手が握られることはなかった。
偶々気づかなかったのかもしれないが、ホメロスはひどくショックを受けたらしかった。その表情は苦渋に満ちている。
「どうして、お前ばかり……」
その顔を見上げ、ルーナは何も言わずに固く握りしめられた拳に手を添えた。共にデルカダールを守るためにホメロスが必死に努力していたのも知っていたからこそ、その場凌ぎの安易な言葉なんてルーナには掛けることができなかった。
昔、陛下に貰ったと言われるペンダントがホメロスの手元で悲しげに光っていた。
prev ◎ next