▼ 妬きデレ
「無月ー、かえろーぜ」
「はーい!ちょっと待ってねー」
急いで帰る準備をして教室の外で待つ高尾くんの元へ行く
「お待たせ」
「ん。行こ」
今日もハードな練習を終え、私を迎えに来てくれた。始めは外で待っていたけど、冬は寒いからって気を使ってくれて教室で待つようになった
暗くなった帰り道。他愛もない話をして、感情を共有できるこの時間が大好きだった
「無月さん!」
「へ?」
「お、おお……高尾もいたのか」
私の名前を呼んだのはうちの学校の男子。どこかで見たことはあるような気はするが、関わりなど一切ない
高尾くんの表情は一気に強張った。高尾くんの立場というものもあるので、私と付き合っていることはごく一部しか知らない
それゆえに……
「無月さんのことずっと好きでした!付き合ってください!」
こういうことが起こるのだ。彼氏の前で告白される私の立場になりやがれ、男子め。
「ごめんなさい、あなたのことよく知らないので。それに好きな人がいるので」
「これから知ってくれればいいです!」
後半は無視された。後ろから感じる高尾くんの負のオーラが、ピリピリと背中に突き刺さる
「とにかくごめんなさい。高尾くん、行こう?」
「……」
「高尾くん?」
「あ、おう……」
それから高尾くんは俯き、いつもは私の隣を歩いてくれるのにすこし後ろをゆっくりと歩いていた
「まったくやだねー、高尾くんの前であんな言うなんて」
ね?と振り向こうとしたとき、背後からぎっと高尾くんが抱きついて来た
「はるか……」
「た、かお、くん……?」
「和成……かずなり、って言って」
あれだ、爆発するかと思う位高尾くんは可愛かった。突然下の名前で呼ぶし、和成って呼べって言うし
ぎゅう、と力を入れてきて、肩に顔を埋める。呼吸が耳元で響く
「和成くん」
無反応。これは呼び捨てで呼べということか?高尾くんがなんだか甘えん坊になっている
「和成……?」
「ん……」
ちゅ、
振り向くと頬に柔らかく温かい感覚。高尾くんの唇。頬に、キス、された
「たっ、た高尾くん?!」
「和成だもん……」
高尾くんのキャラが崩壊している。いつもはあんなに笑ってお兄ちゃんな感じなのに、今日に限ってシュンとした弟キャラだ
「と、とりあえずうち、来る?」
「行く……。」
いつものキリッとした高尾くんもかっこよくて好きだけど、たまにはこんな甘えん坊な和成くんも好き。なんてね
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