▼ only you
最近、敦は悩んでいた。目が合っても反らしてみたり、スキンシップが減ったり。どうも様子がおかしかった
聞いてもいつもの調子で元気だよーなんて言うし。氷室さんに聞いても大丈夫ってその自信はどこからきているのやら……あてにならないし
「敦、私のこと嫌い?」
「は?」
「だって最近冷たいし…」
「嫌いじゃないし。冷たく、ないし…」
一瞬、言葉が途切れた。一応自覚があるようだ。
「私には言えない?敦のためならなんでも協力するよ」
「別に…なんでもないし」
敦は何を躊躇っているのだろうか。部活や学校であったことは今まで普通に話してくれた。告白されたー、やら室ちんにお菓子取られたーやらなんでも話してくれた
なのに、どうして……
「…俺、身長2m超すビョーキなんだって。赤ちんが言ってた。」
敦が言うのは所謂"巨人症"。なんともそのまんまで一見、なさそうな病名だが実在する。
巨人症とは発育期における成長ホルモンの過剰分泌によって起こる病気。通常よりもたくさん成長する、といった感じに
「それで?」
「おれのこと好き?」
「愛してる」
「早死にするんだって」
「じゃあ死ぬまで一緒にいる」
「ホント?」
敦は可愛らしく首をクテンと倒した。いつもの敦だ
「なんなら死んでからも一緒にいる?」
「はるかちんも死ぬの?」
「いいよ。敦のために死ぬんだったら嬉しいよ」
敦と死ぬなら本望だよ、と言えばなんとも悲しげな目をした。ああ、なんて優しい子なんだ。人のためにこんなにも悲しんでくれるこの子が、長生きできないなんて。神様は不公平だ
「…だめ、死んじゃやだ」
「じゃあずっと敦の亡骸と一緒にいるのは?」
「はるかちんシタイイキで捕まるよ」
「死体遺棄なんてよく知ってたね」
そんなことで捕まってもいい。一瞬でも長く敦といたい、ずっとずっと一緒にいたいよ。
一生敦のことを想って死にたいな。他のことは何にも考えないで、ただひたすらに敦のことを思って笑って、泣いて。全てを敦に捧げたい
「赤ちんが言ってた」
「ふふっ、赤ちんは物知りなんだね」
「…赤ちん、褒めちゃやだ…」
「ヤキモチ?」
「……違うもん」
「大丈夫、敦しか好きにならないよ」
あなたの他に何もいらない
だから、ちょっとでも長く近くにいさせて____
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