spilt water こぼれた露


その場の空気が変わるのが、体調が万全でないクロウにも分かった。
それもそうだ、今は黒い髪に黒い翼、どこをどう見ても天使には見えない。


「こんな俺でも天使をやっていた訳だ。ま、結局の所、天使様には向いてなくてな、気づいたら地獄にマッサカサマ。その後はご存知の通りラフィに捕まった。」


クロウの解説にラファエルもフェリートも何も言い出せない。
ラファエルにとっては、誰よりも愛しており、かえる事など出来ない存在だ。
そして信頼していた。
その相手に、まさかこんな隠し事があった。裏切られた、とまではいかないがそれに近い気持ちがある。


「今まで黙っててごめんな、ラフィ。昔は天使でも今の俺はどこからどう見ても悪魔だし、余計な混乱を天界に与えたくなかった。決してお前を騙したかった訳じゃない」

「クロウ、少し時間をくれ。今はまだ頭の整理がつかない。」


セラフィムは、先ほどから黙りこくっているフェリートの頭を撫でる。
こちらが可哀想になるほど驚いている様子だ。
しかし、それをゆっくり慰めている時間はもう無かった。


「クロウ、今回の件どうする。ほっとくとアイツまたこちらの世界にやってくるぞ。」

「分かっている。ゆっくり説得する猶予は与えてくれない雰囲気だったな。」


二人の会話にラファエルが思わず立ち上がる。


「先ほどの侵入者が誰か分かっているのですか!?」


クロウはゆっくりと息を吸い込んで一度吐いてから言った。


「アレは、俺と同じ堕天使だ。名前はルシファー。地獄の王様さ。」

「しかも、クロウのストーカー」


セラフィムは、やれやれと大きくため息をついた。









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