オーダーメイド_ゴロ美ちゃん(真島)

「今度桐生ちゃんにサプライズしたるんや。俺に合うキャバドレス作って欲しいねん」


聞き間違いかな、と思ってもう一度聞いたが間違いなく本当に女性がよく着るあれの事らしい


「真島さんそういうご趣味あったんですね」
「ちゃうわ。俺の趣味じゃなくて桐生ちゃんの趣味やがな」


話に聞く限り桐生さんは硬派なタイプだと思っていたが、隠れた趣味はわからないものだ
いやいや、私達はそんな方々の理想を形にするお仕事なのだから偏見はいけない
気を取り直して真島さんを採寸室へ案内した


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ジャケットの下からは見事な筋肉と般若の彫物が出てくる
胸元に入ってるのは見えていたけど刺青というものはこんなに綺麗に描かれているのかと見惚れてしまった


「なんや、怖いんか?」

「いいえ、とても綺麗です」

「綺麗なんて初めて言われたわ。めいちゃんはやっぱりおもろいなぁ」

「こんなに綺麗に入ってるならドレスは肩を出したのが華やかで良いと思います」

「ヒッヒッヒ、ええのう!露出バーンで行こうやないかい」


真島さんの体は奇麗だ
パッと見細身に見えていたけれど筋肉がある分胸板は厚いし、腹筋もしっかりと割れている
二の腕も引き締まっていてターザンみたいに片手で私くらい持ち上げられるかもしれない
アンダーシャツを着ていないから直接肌に触れてしまった指にピリッと電気が走る
男の人の採寸は初めてではないのに、なんだか緊張して鼓動が早くなってしまう
最初はぽつぽつあった会話もだんだんとなくなってしまい
なおのこと指先に神経が集中してしまう
胸囲を図ろうとメジャーを持つ手を後ろに回そうとするとそのまま真島さんの両腕に包まれた


「めいちゃん」

「ひゃいっ!?」

「アカンでぇ。こないにやらしく触られたら我慢できんようになる」

「やら、やらしい!?すみません!」


慌てて離れようとしてもしっかりと抱えられて振りほどけない
それどころか革に包まれた手が顎に添えられて顔を背ける事もできなかった


「お仕置きが必要やな」


いつものふざけた感じは無く、一つしかない目はまっすぐ向けられている
10cm、5cm、距離がゼロになりしっとりとした感触が触れた
ザラザラした舌が固くこわばっためいの舌を優しくほぐすように動く
それに合わせて真島さんの手が頬から髪へ回されるとその気持ち良さに「んっ…」と声が漏れてしまう
動きに返すように舌先を軽く舐め返すとさらに大きく絡めるように激しく動き、チュ…チュ…という水っぽい音と漏れる吐息だけが部屋の中へ響いた
そっと唇が離れて、また5cm、10cm距離が空くと切なさが胸を占める
さっきまで強く感じていた熱さがもう懐かしい


「今日はこれくらいにしといたる」


攻撃的な装いと優しいキス
アンバランスに見えるけれど彼の本質はどこにあるんだろう


「続きはまた今度な」


そう言って真島さんはさっとジャケットを羽織って出て行ってしまった
腰が砕けて見送りもできない私を置いて




後日、ビビッドなピンクのドレスを着て街を闊歩する姿を見ても
「格好いい」と思ってしまったのでもう本当に末期なのだろう
覚悟を決めてスマホのアドレス帳から『真島さん』の名前を呼び出した



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