BAD END1:佐川という男(佐川)
あの男に惹かれるのを止められず、恋人との別れも決められないまま
恐れをなした私は夜の世界から逃げ出した
ある日、仕事から帰ると人の気配どころか家具の一つもない空っぽの部屋が私を出迎えた
見つけたのは書き置き一つ
『すまない』
その場に座り込んでどれだけたったのだろう
日付が変わっただろう頃にドアが開いて男が入ってきた
その姿を見て混乱していた頭が落ち着き、何が起きているのかようやく理解した
-----彼はどこに行ったんでしょうか
-----彼は生きているんでしょうか
目の前の男にぶつけてもしようのない質問ばかりが浮かんでくる
口に出したところで答えなど帰ってこないだろう
言葉は何一つ出てこないのに、目の前に立つ男から目を離せないでいる
「なあ、そろそろ俺の女になれよ
めいがうんって言やあそれで良い」
聞き慣れたセリフにいつものお店に居るかのような錯覚を覚えた
咥えられた煙草に火をつけなければとバッグを探り、普段はライターを持ち歩いていない事を思い出しす
彼は自分で火をつけ、ゆっくり一口吸ってからがらんどうの部屋へ白い煙を吐き出した
「もう迷う事無いよなあ」
いつもと変わらず口の端を上げて笑う
彼が求める答えは最初から1つしかなかったのだ
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