名前を呼んでよ | ナノ
名前を呼んでよ


なんとなく、ずっと引っかかっていたこと。

どうでもいいといえばそれまでなんだけど。
他の男にはできることを、この俺にできないとは言わせない。



「まさかとは思うけどさ。ヒロ、俺の名前知ってる?」

突然のことに、ヒロは目を丸くした。

「え…宇都宮隆さん、でしょ」
「なんでフルネームなんだよ」

グイと手を引いて、腕の中に閉じ込める。

「俺もたかしなんだけど」
「え…?」
「守尾くん」
「あ…っ!」

やっと意味がわかったヒロは気まずそうに逃げ出そうとする。

「なんで…っ」
「情報社会怖いねー。すぐ俺のとこにも届くから」

逃さないように腰を抱いて顔を近づけるとそれだけで恥ずかしそうに頬を染める。

どんだけ照れ屋なんだよ。
そんなとこが可愛いんだけどさ。

「俺、ヒロに下の名前で呼ばれたことないんだけど?」
「だ…だって…ウツさん…っ」

もうちょっと問いただしたいところだけど。
困った顔も可愛くてソファに押し倒した。




「ヒロ、名前呼んでよ」
「や…ウツさん…っ」
「そうじゃなくて」

俺の言いたいことわかってて、いやいやと首を振る泣き顔に折れそうになるけど。

「1回だけ。な?」

濡れた睫毛にキスを落として、優しく頬を撫でる。

「ヒロ」
「……た、たかし、さん…」

とびきりの甘い声。
不覚にもそれでイキそうになった。

「…よくできました」

くしゃりと髪を撫でると恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑う。

結局、俺はこいつに敵わないんだな。なんて思った。

惚れた方が負けとはよく言ったもんだ。





「えっ…1回だけって言ったじゃないですか…!」
「1回呼べばもう呼べるだろ」
「た…たか、し…」

そこまで口にしたヒロの顔がばっと真っ赤に染まる。

「…なんでそこまで恥ずかしがるんだよ」
「だ、だって、なんか…」

困った顔がやっぱり可愛くて。
今日はここまでで許してやるかな。

「じゃ、隆さんって呼ぶのはベッドでだけにしようか」

抱きしめて囁くと、今度は耳まで真っ赤になった。


End.

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