バースデーイブ | ナノ
バースデーイブ


喫煙できる場所を求めて外に出る。

煙草なんて本当は言い訳で、ポケットから携帯を取り出した。

「はぁ…」

煙のかわりにデカい溜め息を吐き出してディスプレイを覗き込む。
笑顔のその人に指先で触れた。

「なんで…今日なんだよ…」

本当は見たくもない画面から目を逸らして。
だけど微かに聴こえる笑い声。

「悪かったな、今日で」

いきなり後ろから肩を叩かれて、びっくりして携帯を落とした。

「お前って本当にわかりやすいなぁ」

笑いながら落ちた携帯を拾い上げて起動したままの画面を眺める。

「隆さん!いつからいたんですか?」
「最初から。お前が出てったから後つけてきた」

気まずくて視線を落とすと隆さんはアプリを閉じて、彼の声も消えた。

「悪かったよ。貴水さんいない日に食事会なんかして」
「べつに…そんなんじゃ…」

いつだってあの人はこういう場にあまり顔を出さない。
でも今日くらいは、と淡い期待も仕事の都合とやらで簡単に砕かれた。

「本当に間宮は素直だよな」

がっくりと項垂れたおれを慰めるように隆さんがぽんぽんと肩を叩く。

「これだけわかりやすいんだから、あの人だってわかってんだろ」
「…それは、なんとも言えないです」

想いはとっくに伝えてある。
キスもその先も、した。

なのに彼の気持ちがどこにあるのかさっぱりわからない。

いや、彼が本当は誰を想ってるのかなんてわかりすぎるくらいにわかってる。
じゃあどうしておれを受け入れてくれたのか。

都合のいい相手でも構わない。
でも一度だって、彼の方から呼び出してくれたことなんてない。

これならはっきり拒絶された方がまだよかったかもなんて。
グルグル悩んで思わず頭を抱えていると。

「貴水さん、河村です。終わったら少しでも顔出してください。間宮が淋しがってますよ」

いきなり喋りだした隆さんに驚いて顔を上げる。

「ちょ…隆さん!!」
「留守電入れといたから」

慌てて携帯を取り上げようとしたけどすでに通話は切られていた。




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