センチメンタル
息を呑むほどの、煌めき。
そうして今年も夏が終わる。
夏の終わり。ツアーの終わり。
ステージでの高揚を冷ましていく夜の風はいつの間にか秋の気配。
冷えた空気を遮断するように部屋に入ってドアを閉めれば、先にヒロに抱きよせられた。
もつれるように玄関先に倒れ込み、ヒロが僕を組み敷いてキスをくり返しながら服を脱がせてきた。
「ヒロ、ちょっと」
「ダメ。だって我慢できないもん」
止めようとした手を掴まれて床に押しつけられる。
僕だってヒロを脱がせてあげたいけど。まぁいいか。
ベルトを外されれば、もうとっくに熱が集中してはちきれそう。
ヒロが口に含んで更に熱を加えていく。
「んぅ…う…」
さっきまで歌っていたその口唇で。
喉の奥まで咥えこんで必死に僕を愛撫している。
もうなんて可愛いんだろう。
「…大ちゃん…も、いい…?」
絶妙なタイミングでヒロは口を離すとそのまま僕に跨った。
「あ、背中痛い?オレ下になる?」
こんなときまで僕に気を遣うヒロがおかしくて思わず笑う。
「どっちがいいの、ヒロは」
頬を撫でると甘えるように僕の首に抱きついて。
「今日はオレがしていい?」
耳元で囁かれたその声に、不覚にもゾクリとした。
「…いいよ。おいで」
本当にこいつは油断できない。
キラキラと歌っていたさっきまでとは違う。
だけど全てを持っていかれそうなほどの引力。
ステージで出し切ったはずのキラメキを、どこにまだ隠し持っていたのか。