fate | ナノ
fate


ちゃんと、約束をしたかった。

会いたいからって押しかけるんじゃなく、時間を決めて。

オレが迎えに行くまで、ちゃんとオレのこと考えて。
二人の時間はずっとオレだけを想っていて。


ヒロさんのイベントが終わって、オレの舞台も一段落した頃デートに誘った。

デートなんて言ったら笑われたけど、計画たてて迎えに行くからって。


約束の日、朝からオレは何度も車を磨いた。

今夜はよく晴れて、星が綺麗に見えるはずだから。
ボンネットに映る星空も、あの人に見せたい。

オレが好きな景色を、綺麗だと思うものを全部あげたいから。



時間ぴったりにヒロさんのマンションの前で待って、車のドアを開けてエスコートした。

呆れるヒロさんに構わず運転席に乗り込んで、早速キスを奪う。

「今日はデートだからね」

また呆れたように、でもたまにはいいかと笑ってくれた。

「なんか久しぶりだよな、外で会うの」

そう笑ってくれるのが嬉しすぎて、伝えたい想いが溢れてくる。

だけど言葉だけじゃ足りないから、今夜オレが行きたい場所にあなたも連れていく。



食事をしてから車を走らせて都内を離れる。

もう少し空に近づきたくて、高台の静かな場所に車を停めた。

「うわ……」

星空と、その下に広がる夜景にヒロさんが息を飲む。

「凄い。東京からちょっと離れただけでこんなに星が見えるんだ」

空を見上げて、そのあと身を乗り出して夜景を見下ろすヒロさんを背中から抱きしめる。

「和樹…」
「誰も来ないよ。大丈夫だから」

戸惑ったように小さく震える体を更に強く抱きしめると、諦めて力を抜いてくれた。

ヒロさんの肩越しに一緒に夜景を眺める。

「ここの景色、ずっとヒロさんに見せたかったの。都会の夜景ほど明るくないけど」
「オレはこういう方がいい。家族の灯り。あったかい気がするよね」

同じことを感じてくれたことに嬉しくなる。


ヒロさんとオレと。
こうして同じものを見て、ちゃんと同じように見えてる?

ヒロさんが今見ている景色はまた色を変えて、いつかキラキラの歌になる。

オレはあなたほど言葉を使うのは上手くないから、だからここに連れてきたかった。



Next




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -