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CHASE


「じゃ、大ちゃん。あとでね」

先生の後ろ姿を見送って。

さっきから僕に送られている淋しげな視線に初めて気づいたふりをする。

「どうしたの?ヒロ」
「…大ちゃん、また先生のとこ行くの?」
「うん。ちょっと手伝って欲しいんだって」
「そっか…」
「何かあった?」
「ううん。そうじゃないけど…」
「じゃ、行ってくるね」

わかってるよ。
君が僕を引き止めたいって。


だから僕は行くんだ。


***


「よかったの?貴水くん」

少し区切りがついて、お茶を飲みながら先生が聞いてきた。

「何がですか?」
「さっき淋しそうにしてたからさ。呼び出しちゃって悪かったかな」
「大丈夫ですよ。ヒロだから」
「…なんかイジワルだねぇー。大ちゃん」

先生の言葉ににっこり笑って僕は作業に戻る。





「さてと。お礼に食事でも行こうか」

一通り片付けて、先生のお誘い。
でも僕は首を振る。

「せっかくだけど遠慮しときます。あんまりヒロ待たせちゃさすがに可哀想だし」
「え?やっぱり約束してたの?」
「いえ。でもきっと待ってるから」

僕の笑顔に先生は首を傾げる。

「大ちゃんさぁ、貴水くんにはイジワルするよね?いつもは優しいくせに」
「愛情の裏返し、ですから」

僕の言葉に先生は肩を竦めて少し笑った。



だって、そうすればヒロは僕のことだけ考えてくれるから。


ヒロが好きで好きで堪らなくて。
ヒロにも僕だけを見ていて欲しかった。

僕が逃げれば君は追いかけてくれる。


もっとずっと追いかけて。
そのまっすぐな瞳で。


End.

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