Melt | ナノ
Melt


「もう…止めてくれませんか」

テレビに夢中になっている俺の後ろで、ヒロは隣に座ることもできず遠慮がちに声をかけてくる。

聞こえないふりをして、俺は録画された番組の同じ場面をくり返す。

「もーっ本当に!ウツさん!!」

ついに耐えきれなくなったヒロは無理矢理リモコンを奪い取ってテレビを消した。

「あーぁ。見たかったのに」
「もう何度も見てるじゃないですか!!」

よっぽど恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして抗議してくるヒロが可愛すぎる。

「だってヒロがてっちゃんの横で歌ってるなんてさぁ。しかもあの曲…」
「やめてくださいっ!見るならオレのいないとこで見てください!!」

そう。
見ていたのはこの前のFNS。

恥ずかしいから見ないで、なんて言われたらどうしても見たくなっちゃうだろ。

でもあんまりイジメすぎると、また泣かせちゃうな。

「わかったわかった。もうやめるから。おいで?」

ソファの後ろ側に突っ立ったままのヒロを隣に座らせて、腕を掴んで引き寄せる。

「わっ」

引かれた勢いのまま俺の胸に倒れ込んできたヒロを抱きしめて、そのまま体勢を変えて体の下に組み敷く。

「ちょっ…ウツさん…っ」

突然の展開に驚いて逃げようとするけど、この状態で敵うわけない。

可愛い抵抗をする手を掴んでソファに押しつけた。

「ムダなことしないの。それとも何?ヒロは俺とこうするのイヤなの?」
「違…だって…!」
「何?」
「……ベッド、がいい。です…」

頬を紅くして、消え入りそうな声でそんなこと言うヒロはそりゃ可愛いけど。

何をするにも恥ずかしいとか遠慮とか。
もういい加減いいんじゃない?

何年一緒にいると思ってるんだ。

俺にだけ、とか。
たまには大胆なとこも見せてよ。

「今日は、ここで」
「あ…っ」

シャツの裾から手を入れて触れると、ビクリと震えて口唇を噛んだ。

そうやってまた我慢しちゃうんだね。

「ダメだよ。口唇に傷がついちゃうでしょ」

指をくわえさせてそっと口を開ける。

「ウツさ…っ」

戸惑ったように、泣きそうに見上げてくる表情を楽しみながらもう一方の手をシャツの中に滑り込ませる。

捲り上げようとしたら裾を押さえて抵抗してきた。

「ヒロ」

口を解放して、抗う手を咎める。

「やだ…あの、電気…」

……本当にもう、このコは。

今までに何度も抱き合って。
身体の隅々まで知り尽くしてるっていうのに。

それでも必ずベッドで、暗くして。

言いたくないけどそんな歳でもあるまいし。
もうちょっと、大胆になってもいいんじゃない?

「今日はダメだよ。ちゃんとヒロの顔見せて」
「ウツさん…っ」

なんだかんだ言って俺もヒロには甘いから、いつもは強引なことしないんだけどね。

泣かせたいわけじゃないけど。
いい加減、殻を破って引きずり出してあげる。

「…っ」

ヒロは自分で口を塞いで、上がりそうになる声を必死で抑える。

「声出しなよ」

そうやって我慢してるとこも可愛いけど。

「やだ…恥ずかし…っ」
「恥ずかしい声出すほど感じちゃってるんだ?」
「や…っ」

口元を押さえる手を外すと、もう我慢できずに可愛い声が零れる。

「やだ、ウツさん…離して…」

泣きそうな顔で掴まれた手をほどこうとするヒロが、もう可愛くてしょうがない。

手で口を塞ぐかわりに口唇を重ねた。

「んん、…っ」

そのまま体を撫でると大きく震える。

「ずっとキスしててあげるから。それなら恥ずかしくないでしょ」
「う、ん…っあ…」

それでも離れた僅かな隙間から洩れていく声は止められない。

「ヒロの声可愛いのに。なんで恥ずかしがるの?」
「……ウツさんだから…恥ずかしい、よ…っ」
「じゃあ、俺以外の誰かの前ではそんな声出すの?」
「な…そんなこと…っ」

わかってるけどね。
でも俺だから、聴かせて欲しいのに。

「や…あぁ…っ」

下の方に手をのばして触れる。
いきなり強めに愛撫を与えると大きく体が跳ねた。

「ウツ、さん…キスして…」

また口を塞いで欲しいのか、可愛いおねだりをしてくる。

頬や額に、わざと口唇を避けてキスを落とした。

「あ、あ…やだぁ…」

ビクビクと震える体に、もうこのままイカせてあげてもいいけど。

「欲しい?」
「ん…早くっ…ウツさんの、入れて…」

恥ずかしがるくせに、こういうとこ大胆なんだよなぁ。

無意識にそうやって煽ってくるから堪らない。


もう快楽を待ちわびてる体は、羞恥も戸惑いも影を潜めて。

そうやって俺の前では理性も全て取り払って。

溶けて。乱れて。



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