KISS LONELY GOOD-BYE | ナノ
KISS LONELY GOOD-BYE


ツアーが終わって何日かした頃にシンノスケからメールが来た。

『9月1日に会えますか?』

いつもは何日も先の約束なんてしないのに、その日の意味を知ってくれてるのだろうか。

なんだか嬉しくて、会う約束をした。





8月31日の夜。

着信を知らせるランプにメールを開くと、送り主はシンノスケじゃなく大ちゃんだった。

『今夜はブルームーンだよ。一緒に見よう』

カーテンを開けて月の写真を一枚撮ってから、大ちゃんに電話をかける。

『ヒロ、今大丈夫?月見てる?』

「うん。大ちゃんのメールで気づいた。スゴいキレイだね」

『ブルームーンは願い事が叶うんだって。一緒に見ようよ。今からおいで』



家を出ようとしたとき、またメールを受信した。

今度はシンノスケ。

『明日、大丈夫ですか?都合のいい時間教えて下さい』

明日…。

今から大ちゃんと会っても、明日の夜にはシンノスケと会えばいい。
約束を破るわけじゃない。

それなのに、罪悪感に胸が痛んだ。

……メールは、あとで返そう。





大ちゃんの家の屋上で、写真を撮り終えた大ちゃんがオレの隣に座る。

「願い事した?」
「うん。大ちゃんとずっと一緒にいられますように」
「僕も」

ぎゅっと手を握られて、顔が近づく。
素直に目を閉じてキスを受けとめる。

「ヒロ、明日は記念日だね」

口唇を離して大ちゃんが笑った。

「…覚えててくれたんだ」
「当たり前でしょ。ヒロの大切な日だもん」

今までソロの記念日を二人で祝ったことなんてなかった。

特に9月1日は、大切な思い出の他に苦い想いもたくさんあったから。

「やっぱり、今のaccessがあるのはあの7年間があったからだよね」

戸惑うオレに気づいたのか大ちゃんが優しく笑う。

「離れてるのが辛い時期もあったけど。でももしやり直して、何かが違ったら今の僕たちはいなかったかもしれないから」

大ちゃんの言葉に泣きそうになる。


自分たちで決めた道でも辛いことは多すぎて、でもそれも全部ムダじゃなかったって。

ソロでやってきたこともaccessも全部つながってる。

それを大ちゃんに認めてもらえたことが何より嬉しかった。


「明日は一緒に過ごそうね」

大ちゃんに抱きしめられて、涙をなんとか堪える。

泣きそうな顔を見られたくなくて今度はオレから口唇を重ねた。

どちらからともなく深くなっていくキスに息苦しくて、でも離れたくない。

「大ちゃん…もう、部屋戻ろう?」
「うん。ベッド、行こうね」

先に立ち上がった大ちゃんに手を引かれて歩き出す。

もう一度月を振り返って、願い事をした。


このままずっと、大ちゃんのことだけ想っていられますように。

誰も傷つくことがありませんように。


自分勝手な願いに、罰を受ける覚悟はできている。

胸の痛みはずっと消えないままでいい。


End.

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