恋愛パラドックス | ナノ
恋愛パラドックス


夜のベランダで。
何本目かの煙草を灰皿に押しつけて溜め息をつく。

無駄に時間を潰しても何の意味もないことはわかっている。

もう一度溜め息をついて、俺は部屋に戻った。



ソファに横になったヒロは気持ちよさそうに寝息をたてている。

「ヒロ、風邪ひくよ」

そっと肩を揺らすとゆっくり目を開けたヒロは俺に腕をのばしてきた。

誘うようなその仕草は天然で、本人には全くその気なんてなくて。

「……あ〜もうっ」

苛立って、そのままヒロを抱き上げる。

「え…っちょっと何、倫?」

寝起きのヒロは突然の俺の行動を理解できるはずもなく。

当然のようにジタバタと抵抗してきたけど気に留めることなく寝室へと連れ込む。

「この状態ですることって言ったらひとつだけでしょ」

ベッドに降ろして馬乗りになる。

「え…えぇっ??」

慌てるヒロを無視して服を脱がせていく。

「ちょ…待ってって、倫!!」
「もう待てないよ。ずっと我慢してたんだから」

言いながらTシャツの裾から手を入れるとビクリと震えた。

「あ…やだ…っ」

泣きそうな顔で首をふるヒロは可愛いけど、もうやめてなんてあげられない。

胸の敏感な部分に舌を這わせると、押し返そうとしていた手は縋るように俺の背中にまわされる。

そんな抵抗でやめてもらおうなんてやっぱりヒロは甘すぎる。

「…っ」

けれど小さくしゃくり上げるような声にさすがに俺は顔を上げた。

「っ…倫、やだ、よ…」

今にも溢れそうなほどに涙を溜めて俺を見上げる。
そんな顔をされたらさすがに無理強いなんてできるわけがない。

「泣くことないじゃん…」

もう何度目かの溜め息と共に抱きしめる。
ヒロは小さく震えたけど抵抗はしなかった。

「俺はヒロのこと好きだよ。だから抱きたい。やだ?」

少し腕を緩めて顔を見ると、ヒロは困ったように視線を泳がせた。


普通の恋人同士なら何気なく越えてしまえることも、俺たちはそうはいかない。

男同士で、ヒロが戸惑うのは仕方がない。


「…わかったよ」

もう俺は一生分の溜め息をついてしまったかもしれない。

ヒロを抱きしめたまま横になる。

「ごめんね。もうしないよ。だから安心して寝て」

ヒロが俺の傍にいてくれればそれだけで幸せだったはずなのに。
いつからそれ以上を望むようになったのだろう。

俺たちの関係は簡単なものじゃないはずだ。

そう言い聞かせて、自分を納得させようとしたとき。

「……嫌じゃない、よ…」
「え…?」

震える声でヒロは言った。
もう泣いてない。

「倫ならいいよ。オレも、倫が欲しい」

まだ不安の色を残した瞳で。
それでも俺を受け入れようとしてくれるヒロが愛しくて、キツく抱きしめる。

「…途中でやっぱりやだって言っても、もう止められないからね」
「うん…」

応えるように、ヒロも俺の背中に腕をまわしてきた。



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