永遠のパスポート
「だからっ。ウツさんには関係ないじゃないですか!!」
「そんな言い方ないだろ。俺だって心配してるのに」
数分前から続いてる言い合いに、二匹の猫はソファの上から耳だけを動かしている。
「もういいです!ほっといて下さい、オレのことなんか」
「な…!!」
「…っ」
ヒロがビクッと身を竦める。
急に変わった空気を感じとり、二匹は同時に顔を上げた。
隆ははっと我に返ったものの、ふり上げた手は戻ることなくスピードを緩めながらも軽くヒロの頬を叩いた。
痛みはなかったがじわりと頬が熱くなる。
何より隆が手を上げたという事実にショックを受けた。
「……ウツさんのバカっ!!」
まるで子供のように大粒の涙を溢し、そう叫ぶとヒロは出て行った。
勢いよく扉が閉じられ部屋に静寂が広がる。
「あーぁ」
それを破った隆の情けない声に同調するように、二匹の猫はにゃあと鳴いた。