◎ Witch Doctor 斎藤
「じゃじゃーん!私のお手製パンプキンパイの出来上がりですっ!」
微かに匂う、パイ生地が焦げた匂いはともかく。
ハロウィンに一番近いお休みの日、私は久々にお菓子を作った。ネットから印刷してきたレシピだけど、これでも心を込めたつもり。
とにかく、大好きなはじめ君に食べて欲しかったから。
「これは、あんたが作ったのか。」
「そうだよ。まあ、ちょっと失敗しちゃったけど。」
パリっと音をたてながら、パイが切れた。お皿に取り分け、焼きたてを渡す。
「まずは、お味見どうぞ!あっ、不味かったら、遠慮しないで残してね?」
はじめ君が、おそるおそる口に運ぶ。あれ、そんなに見た目からアウト?
「………ど、どうでしょう?」
「………うまい……。」
「その間は、どういうことでしょうか?」
「誰だって好きな女性の手料理を食べる時は、その、緊張する。」
よく見ると、はじめ君の頬が赤いような、そうでないような。
「うまい、本当に。優しい味がする。」
後日談
「どうだ、俺も作ってみたのだが。」
次の週、はじめ君が同じものを作っていた。見た目は、私よりキレイ。水あめが塗られ、光沢感があるそれは、正直言って売り物レベル。
いや、肝心なのは味だ。
一口ぱくり、と食べると。
「…………超絶、美味しい…。」
これは先週の私に対する、皮肉だろうか。
はじめ君を見ると、はじめて食べてもらう自分の手料理にどうやらど緊張しているみたいで。
(まあいっか。)
これから料理は積極的にはじめくんに任せよう、そう決めた。
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