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 Arm und Nacken die Begierde

腕と首なら.......


俺の初恋は、決して叶わない。
理由は簡単だ。あろうことか、俺は従姉妹である彼女に恋をした。

今、俺の自宅で無防備に昼寝をしているのが、3コ上の従姉妹であるありすだ。
家はわりと近い、だから昔から彼女とは親しくしていた。
気の強い、だけど頼りがいのある姉貴文。小さい時は、なんの恥じらいもなく彼女と風呂に入ったり、一緒の布団で寝たりした。隣に彼女がいるのが当たり前だった、別に昔からいい意味で女性として意識したことはなかったのだ。

それが、いつからだろうか。
彼女はだんたんと大人の女性になっていった。たぶん俺が思春期を迎えたころからだったと思う。やけに彼女を「女性」として意識してしまうようになった。
長い黒髪、柔らかな声、そして発達した胸。すべて男どもを魅了するのに申し分なかった。
月に数回やってくる彼女を心待ちにしているこの気持ちが、恋だと気付くのに、そう時間はかかるわけもなかったわけだ。

「んー.....」

こうして今日も俺の自宅にやってきては、適当に一緒にテレビを見て、くだらないことを話して、目の前で昼寝をしている。
彼女は俺の気持ちなど、分かっていないだろう。嫉妬に狂う俺をよそにして、彼氏とケンカしただの、あの俳優がかっこいいだの先程まで話し続けていた。
まるで子供のようだ、そうして疲れ果てて勝手にすやすやと寝息をたてている。

「まったく....あんたからしてみれば、俺はただのガキ、か。」

そんな無防備な姿はまるで「いつでも襲ってください」と言っているようだった。
心臓に悪い、そして生殺し、だ。

別に自分は、従兄妹同士といった身内間のの恋愛が悪いとは思っていない。身内とは言え、他人の人間。惹かれあった者同士がたまたまそうであっただけというだけだ。他人が顔色悪くしてとやかく言う問題ではない。

では今、自分が躊躇っているのは何かといえば「彼女との関係が片っ端から崩れること」だ。
俺のこの気持ちを聞いて、彼女はどう思うだろうか。おそらく、びっくりするだろう。いや、びっくりという問題では済まされないかも知れない。
彼女は従兄弟に好意を抱かれている、そう知ったらどう思うだろうか。優しい人だから、変わらず接してくれるだろうか。それとも優しすぎる故に、その接し方に悩ませてしまうかもしれない。仮に彼女が俺に対して好意を抱いていたとしたら万々歳だが、その可能性は一般に期待できないから、その一歩が踏み出せないのだ。

そうやって彼女を困らせ、挙句の果てに関係が崩れ去ってしまうというのであれば、俺は喜んでこの想いを胸にしまうことができるのだ。

「ありす......起きているか....。」

彼女の前髪を、やんわりと解きほぐした。
眉にしわを寄せて、小さな声を零す。どうやらまだ夢の中のようだ。

「寝るなら、自宅に帰れ。そうでないと風邪をひく...。」

少し、嘘を付いた。
正しくは「そうでないと、自分の理性が保てない」だ。


「あんたのその彼氏は、どういう男なんだ。ケンカなんぞするなら、さっさと別れてしまえばいい。」

そして自分の所へくればいい、その言葉は喉の奥深くに飲み込んだ。
それを言っては、全てが終わってしまうような気がしたからだ。

無造作に机の上に投げ出された彼女の腕が、ぴくりと動いた。
細くて白い指、すらりと伸びた絹のような肌、まるで俺を誘うかのように。

「好きだ、そういったら....あんたは何を思う。」

長い髪の隙間から、首筋が見えた。
あの部分にこの唇を這わすことができるのならば、どんな味がするのだろうか。間違いなく、後戻りできない蜜の味がするだろう。

「気付け、そして永遠に気付くな......俺の想いを。」

すまぬ、もう我慢ならない。すべてあんたが、悪いのだ。
そう赦しを勝手に乞い、俺はその場を後にした。




欲望
それは決して満たされないものだと







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