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「っ、」

ぴりっと、生傷を刺激された様な痛み。
なにかとシャワーの圧を弱め、痛みの走った背中に触れる。指の腹が捉えたのはぬめりとした感覚と、ぺろっとむけた肌の皮膚。

(あ、臨也の所為だ)

犯人は考えずとも明白で、わたしはふつりと込上げる怒りと共にバスルームから飛び出した。

「イザヤ!」
「…わお、何時になく積極的なお誘いだね」

黒い皮張りの回転イスに優雅に腰かけ、資料をぺらぺらと捲っていた臨也が少しだけ物珍しそうに言った。だが見当外れも良い所の台詞を朗々と語るので、わたしは思ったよりも大きな声で「ちがう!」と叫んでしまった。

「うんうんわかってる。素直に慣れない可愛い恋人のツンデレ発言にも怒らず、焦らず、腹立てず。こうしてそっと察して寝室にエスコートしてあげる俺ってば、本当に紳士で素敵な情報屋だよねぇ〜」
「離せこのメンヘラ厨二病」

近くに寄って来た臨也が、さり気なく腰を抱いて来た。もちろん、思い切り皮膚を抓ってやった。だが臨也は「そんなサディスティックな君の愛も良いね。人ラブ」と余裕の笑みを浮かべてからかって来るから堪らない。本当に、この男のこういうつかめない言動は気色が悪い。

「ねえ、手。出して」
「なに、女王様プレイはおしまい?」
「ちがう!!」
「アハハ、すっごいブサイクな顔! はいはい、手がどうしたって」

余分な茶々を挟みつつ、ヒラヒラと差し出された手をわたしはずんむりと掴んだ。そしてずるずると引き摺れば、臨也がちょっと抜けた声で「バスタオル剥いで良い?」と訊いて来たので、掴んだ手首を思い切りぞうきんのように捩じった。でも臨也は痛がる素振りを見せるだけだった。

「そこ座って」
「はいはい、仰せのままにお姫様」

折原臨也のツメを切る

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