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「おかえりなさいっ!!!」
「……ただいま、」

お玉を凶器のように掲げ、ぎんっとこちらを睨みつけてくるりおん。だが、有馬は眉1つ動かさない。そうしてさっさとコートを脱いで玄関を上がると、リビングテーブルの上、あったかい料理が並ぶ食卓に着いた。

「いただきます」
「____無視してんじゃないわよ!バカ白髪!!アホ!喰種狂いのシンショー!!」

(うまい…)

がんがんっとテーブルにお玉を叩きつけるりおん。ヒステリックに叫ぶ姿に見向きもせず、有馬はもくもくと箸を進めた。この光景は、数か月前から始まった日常だ。

りおんは、あの一夜の後、なぜか幽閉された。有馬の所有しているらしいマンションの一室に閉じ込められ、室外に対する一切の自由を禁じられた。あまりの理不尽に噛み付くも、有馬やCCGの職員は決して首を縦に振ってはくれなかった。りおんは『喰種と深い関わりを持つ』疑いをかけられたのだ。____有馬を大嫌い発言し、その仕事を少し詰っただけでこれた。恐らくその言動から、喰種を庇っている…イコール、喰種と関わりのある人物と認定されたのだろう。

(わたしは…研センパイを探していただけなのに)

だが、そう素直に答えることもできなかった。
だって、金木研は現在喰種になっている可能性が非常に高いのだ。それなのに、不用意に彼に注目を集めるのは良くない。確かにりおんは金木に会いたいが、その身を危険にしたいわけでは決してないのだ。

「…一体、いつになったら出られるのよ」

ぼそりと呟いた言葉は、黙々と食事を進める有馬の箸を止めるくらいの力はあったらしい。

「……君が、庇っている喰種の情報を我々に教えてくれるまでだ」
「だから庇ってないって言ってるでしょ!!ストレス堪るのよ!!せめて散歩くらいさせなさいよ!!」
「了承しかねる」
「鬼畜!!」
「その鬼畜に、君は何時も丁寧な食事を用意してくれるな」

ちらりと食卓を見た有馬が言う。全て手作りで、しかも有馬の帰りに合わせて温められたものだ。少し前までは、有馬の生活を考えると在りえない光景だ。

「しょうがないでしょ!!こちとら無理矢理衣食住のすべてを寄生させられてるのよ!この位しないと金銭的な罪悪感で夜も眠れないわよ!!」
(律儀なことだ)

うわーんっと崩れ落ちるりおんに、有馬は里芋の煮っ転がしを咀嚼しながら思う。
衣食住の全てを面倒みるのは当然のことだ。一般市民、それも学生と言う身分である彼女を、無理やりこの狭い空間に押し込めて、その自由の一切の権利を奪っている。場合によっては、彼女の未来は絶望的だ。しかも…、

(俺のこと、死ぬほど嫌っているようだしな)

有馬貴将が剥がれないはなし

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