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折原臨也を愛して痛い




唇が重なる温度は、思っていたよりも暖かいものだった。
だから泣いてしまった。

「…なんで、泣くのさ」

解らないと首を振る、震える喉から声がでない。そんな私を見て臨也は不快そうに顔を歪めた、その顔は泣いている私よりもずっと辛そうに見えた。

「そんなに俺と、…キスするのはイヤなの?」

返事はしない。そんな私に臨也は何時も纏っている飄々とした空気を完全に打ち消した。突如腕を振り上げて傍らのソファーの背を叩いた。その音に吃驚して見上げれば、臨也の綺麗な顔が痛々しく歪んでいた。赤い瞳が、泣いている。

「勝手にしろっ」

そう言って離れようとするから、引き留めたくて手を伸ばす。だが背に触れる前に、臨也が再び腕を振り上げる。そうして机の上の書類を叩き落とし、がんっと拳を振り下ろす。その振動で落ちた花瓶が大きな音を立てて割れた。じんわりと広がる水。散った花は、臨也と同じ赤い色。

「…帰れ」
「__」
「今すぐっ俺の前から消え_____っ!!!」

もう何も聞きたくなくて、私は臨也にキスをした。彼の声は引き攣って、私の唇が切なく震える。セカンドキスは、彼がくれたそれよりも遥かに熱くて、私はまた泣いてしまった。

「うれしくて、…ないたの」

その言葉は、臨也に届いただろうか。





私を抱きしめてくれる臨也の腕の中、彼の頬に指を這わした。乾いた頬に涙のあとはない、臨也は泣かない。誰にだってそう。
でもあの時…そして今も、私は確かに彼の赤い瞳が啼いているのを知っていた。
閉じた瞳から頬に伝う私の涙を、感じた。

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