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ジェイドリーチの嫉妬はファンレターを焼べる




____「今週のブックテン! 第一位は…ほしよみうらら著『自分の未来のぞいてみませんか』!」

「!!  〜〜〜っ!」
「いたい、いたいよ ジェイド」

テレビ一面に映し出された本を見て、ジェイドの魔力がぶわりと昂った。

バシバシッと太鼓のように背を叩いてくるので、お茶がテーブルの上にこぼれて水溜りになっている。ダメだこりゃ。魔法で台所から布巾を取りよせ、粛々とテーブルを拭く。ジェイドはきゅいきゅいと喉で鳴いて、テレビに身を乗り出していた。

…ほしよみうらら、というのはわたしの芸名。
名付け親は山辺さん、顔出しNG正体不明の『千里眼』の占い師としてそこそこ有名だ。まあ、この第九世界では唯一と言っても過言ではない本物の“魔法士”による占いだ。当たらない方が可笑しいというもの。

これが魔法魔術の特化した世界だったのなら、これほどまでに持て囃されることはなかっただろう。なにせ、あの世界にはわたしなんかより腕の立つ占星術師が星の数ほどいるのだから。

「ミワ、この番組録画してますよね。フロイドに送って自慢します」
「いや別にこの位で…本の中身みたでしょ、大したこと書いてないんだって。NRCの一年生の教科書の方がまだ詳しいよ」
「おや、随分と謙遜なさる」

こてんと首を傾げるジェイドの顔は、えらくご機嫌だ。わたし以上に、今日のランキングを楽しみにしていたのだから当然だろう。

どうにも照れくさくて、誤魔化すように首を摩る。でもそれすらお見通しのようで、畳の上をすべるように移動したジェイドが、ゆっくりとわたしの体に抱き着いてきた。

「僕は嬉しいです、まるで自分のことのよう」
「ジェイドが嬉しいなら頑張ったかいがあった」
「僕の旦那様は素晴らしい人だ、ふふアズールにも自慢しないといけませんね」
「止めて、恥ずかしい」
「ああでも、これからもっとミワに群がる雑魚が増えると思うと腸が煮えくりかえりそうで。間違ってもファンレターなんて開けないでください、そんなことをされたら僕…自分でも何をするかわかりません」

ゆっくりと畳に押し倒されながら、脅迫された。え、どういう状況。自分の言葉を想像したのか、ジェイドの異彩の目が人魚のそれに変異している。縦に裂かれた捕食者の瞳だ。

ぼんやりと思い出すのは、ジェイドがこの家に来たときのこと。キレイに掃除された部屋、未開封のまま置いておいたファンレターが詰まった段ボールは跡形もなく片されていた。

返事が遅いのが気に食わないのか、ジェイドがかぶりと喉に噛みついてきた。食い込む牙が痛いので、「段ボールごと燃やすよ」と応えて髪を撫でる。返事がないので「シュレッダーの方が良い?」と聞けば、解りやすいため息が返ってきた。

「火でお願いします、もう見たくもありません。貴方への恋文なんて」
「あっちは、わたしが男か女かもしらないよ」
「性別は関係ありません。僕の番を誑かそうなど、…ひとりひとり喉笛を噛み契って、鮫の餌にしてやりたい」
「そんな無茶な」
「名前も住所も、すべて覚えてます」

覚えてますよ。と、ゆっくりと繰り返す。

人魚の激情を抑えようとしているのか、顔を掌で覆って耐え切れないというように震える。指の隙間から見える瞳は爛々と狂気の色をちらつかせていた。

あの何百枚もある手紙の名前と住所をすべて覚えているって、そんな馬鹿なと。普通なら笑うところだが、ジェイドならやりかねない。若干記憶力の良さの遣いどころを間違っている気もするが。

「…ジェイド、戸籍ができたらさ」
「…」
「婚姻届け出しに行こうか、そうしたら少しは不安じゃな ぐぶふ  」
「ああもう貴方って人は!!!」

すき!!!!と、全身で叫んでいるようだった。カワイイジェイド、だがわたしの肋骨は死んだ。

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