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ランチタイムに駄弁る夢ノ咲学院3-A


「ことっちはさ、この中で結婚するなら誰とする?」

昼休みに羽風がしょうもないネタをぶっこんできた。わたしは購買で購入したサンドイッチを咀嚼しながら、自分の顔から表情が消えるのを確かに感じた。隣ではそんなのどこに吹く風で守沢がカカカカカッと弁当を掻きこんでいる。面白いから止めて欲しい。

「恋人にするならじゃなくて結婚するならってネタをぶちこんでくる辺り羽風がなんちゃって遊び人なのが見て取れるよね。おもっ おもっ羽風のくせにおもっ」
「ちょっと待って俺の苗字関係ないよね」
「ほんそれぇ てかさ、なんで俺の机でランチするわけぇ? 邪魔なんだけどっ守沢弁当溢さないでよねぇ!」
「羽風、べつに男女交際をしたからといって結婚する義務はないのだぞ…?」
「え、もりっちどうしたの…?」
「水梨がそう言っていた!!」
「もりっちのことっちが言った事100%みたいなその感じ、俺どうかと思うなあ」

羽風がわりと真剣な顔で意見してくるので困る。だが事態を正確に把握しているのは残念ながらわたしと瀬名だけだ。千秋は「なぜだ!?水梨は物知りで何でも教えてくれるぞ!羽風とちがってな!」とキラキラヒーロースマイルを絶やさない。あ、羽風が「ソッカ」って諦めた。諦めるんだ。それでいいのかUNDEAD。

「で、どうなのぉ?」
「え」

瀬名がボトルを手にきいて来る。げぇという顔もするも、水色の瞳が蛇のように睨みを利かせてくるから逃げられる気がしない。ちくしょう、オシャレにフルーツウォーターなんて持ってきやがってこの女子が!

「う、うーん… ここはちーちゃんって言いたいところだけど」
「俺か!!」
「え˝!?」
「うわぁ… 趣味を疑うわぁ〜」
「まって、まだ続くから。 …ちーちゃん家ってさ、兄弟いないよね?」

盛大なディスりをうけながらめげないで訊けば、千秋はこてんと首を傾げたあと「そうだが」と肯定する。

「ないわ。長男の嫁はないわ」
「なぜだ水梨! それは偏見ではないのか!?」
「家督とか相手方の両親の世話とかちょ〜面倒。 ムリ、現実的じゃない」
「へー意外と現実的じゃん。ってことは、同じ理論でせなっちもナシだね」
「はあ? 俺に話ふらないでくれるちょ〜ウザいんだけど」
「変わり身早っ」
「いーちゃんは兄妹の有無って言うより…」

ちらっと瀬名の弁当をみる。…女子顔負けなパーフェクトな弁当がそこにはあった。驚くこと無かれ、瀬名の手作りである。仕事第一のこの男は毎日グラム単位で計算され尽くされた食事をとり、現在の体系を保つために日々研鑽を欠かさないのである。…そんな男と、ぐうたら人間のわたしが真面にお付き合いできるかといえば、

「ムリ。いーちゃんは絶対無理、いろいろ無理」
「はあ!? それは俺の台詞なんだけどぉ!上から目線止めてくれなぁい!!」
「解るぞ! 瀬名はこの中で一番めんどくさそうだからな!」
「ちょっとっそれ守沢にだけは言われたくなんだけっ  ごほっ ごほっ」
「あー あー 大声出すから、ほらお水飲みなよ」
「せなっち繊細だな〜」

咽る瀬名の背を摩りながらペットボトルを差し出したら、大人しくこくこくと飲んだ。だが、その後涙で潤んだ目でキッと睨まれた。え、なんでわたし…わたし悪くない…。

「じゃあさ、消極法的に残るは俺ってことだよね?」
「はーちゃん家、家族構成は?」
「父親と、姉と兄がいるよ。 ま、ちょっと堅苦しいけど俺次男だし、結婚したら家を出て自由に暮らそうよ」
「………」
「ちょっとことにゃんなにマジな顔して考えてるの!? 相手かおくんだよ!?」
「俺せなっちになにかしたっけ?」
「瀬名の言う通りだぞ水梨! こんな不埒極まりない下半身男は止めておけ!!」
「もりっち????」
(まあ、冷静に考えて…)

そもそもアイドルの嫁っていうのがありえなんだよなあ。もそもそとサンドイッチを食べながらそんなことを思う。三人がぎゃんぎゃん喧嘩してたけど、張本人であるわたしを放置して話しを進めている限り男としての程度が知れると言うものだ。お前らもうちょっと成長しろ。

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