OTHER JUMP | ナノ

〜道中与太話その道すがら


「永倉たちを探して合流する、お前たちは先に月形へむかえ」

そうして始まった月形への旅、勘弁してくれわたしは野宿があまり得意ではないんだ。
あとわたしと尾形は燃えた江渡貝邸にいたので、煤汚れがひどい。身体を洗いたいが逃亡中の身ではそうも言っていられない。

暫く黙って歩いていると、荒い岩肌の川に出た。アシリパが先頭を行き、その後ろを杉本が行く。その後ろに裸足の牛山さん、わたし、尾形が続いた。後ろからの視線が背に突き刺さっているのがわかる、ゴメンて。歩くの遅くてゴメンて。

「今日はこの辺りにしよう、日が暮れる前に寝床を見つける必要がある」
「やったぁ」

アシリパの言葉にしゃがみこむ、もうヘトヘトだ。はあと空を仰げば、身軽な動きでアシリパが寄ってきた。

「まち、煤を落としたいだろ。手伝ってやる」
「ありがとぉー」
「杉本、わたしはまちと向こうの川辺に行ってくる。それまでに薪を集めてくれ」
「わかった。2人とも気を付けてね」
「…念のため言っておくが、のぞくなよ」

白石前科の所為で、アシリパが人間不信に。じっと見詰められた尾形はしかし顔色ひとつ変えることなく、呆れた様子でハアと溜息をついた。「さっさといけ」と髪を撫でながらいうので、わたしはアシリパを急かしてさっさと川辺を下った。牛山さんはすこしソワソワしていた。

手拭いで身体に着いた煤を拭い、服を払う。幸いにも焼けこげた跡はなかった。
髪をひとつに括り男衆に合流すると、すっかり寝床の準備は整っていた。尾形もその間に身なりを整えたようだ。

「美味しいの?」
「脳ミソが美味い」
「また脳ミソかぁ… わたしは普通に肉食べる」

複雑な気持ちでヨダレをたらすアシリパを見ていると、尾形が銃を構えた。
予想通りのやりとりを見守り、アシリパと杉本が罠の準備をしている間、夕食を準備する。贅沢は天敵のため、麦飯を少なめに炊き、ユリ根や山菜を混ぜて味噌溶きおじやにした。重い水を運ぶ仕事は、牛山さんが率先して担当してくれた。手慣れていることを訊ねれば、家永さんの家事をしばしば手伝っていたらしい。なるほど納得、ところでやっぱりお二人はデキてるんですか?



「ヤマシギが罠で獲れた! …けど、」

杉本がちらりとこちらを見る。なので、ちらりと横にいるアシリパを見る。心なしかぶすっとしている彼女は、一拍置いて「羽根をむしる」ぼそぼそと言った。

「みんなで食べるには足りないかも、 だけど、ね ね花酒さん」
「雑にふらないでくれるかな? 獲れただけ良いじゃない、十分すごいこt ぶごふ」

お手伝いするためにしゃがみかけた身体は、頭上から襲来したブツのため思い切り地面にこんにちはすることになった。いたい…石…顔にあたる。てか、鳥臭い…。

「おいテメェっ や、ヤマシギ… 4羽も…」
「え、なに ヤマシギ?」
「…今朝またいなくなったと思ったら… 散弾じゃないのによく撃ち落としてこれたもんだ」

痛む顔を抑えて起き上がれば、目の前にはヤマシギの山。いや、逆ではなくて。
そろりと後ろからかかる影を見上げれば、…わたしにヤマシギシャワーをお見舞いしてくれた尾形が髪を撫でつけていた。そして、フンと得意げに笑って見せる。

「腹立つなコイツ」
「ッチ」
「顔めっちゃ打ったんですけど」

さらっと苦情を紛れ込ませると、気づいた地獄耳尾形が「文句があるなら食うな」と言う。

「う、」
「俺は一向にかまわんぞ」
「花酒さん、コイツ アシリパさんにムリだって言われたからムキになってんだぜ ハンッ」
「杉本は銃がヘタクソだから妬ましいなぁ」
「別に!!」
「まち、今日はご馳走だ。一緒に羽根を毟ろう!」
「わたしの作業速度をナメんなよぉ 一羽やるのに日を暮れさせるぜ」

案の定、作業が遅いとアシリパに怒られた。中途半端に羽根のもげたヤマシギは、杉本が代わりにキレイにしてくれた。ありがとね。

「チンポ先生、ヤマシギの脳ミソです」
「食っていいものなのか? それ…」

「ヒンナヒンナ!」と一心不乱に脳ミソをしゃぶる杉本を見た後、不安そうに牛山さんがこちらを見る。わたしはとびきりの営業スマイルで親指を突き出した。グッバイ、牛山さん。わたしは一舐めだけしたよ、一口も手を付けないとアシリパ機嫌悪くなるからね。

「いや俺はいらん」
「ダメだ食え。まち、尾形に脳ミソ食わせろ」
「いきなりハードな注文してくるなあ」

わたしにスプーンを握らせて「あとは内臓ごとチタタプにする」「出たぁ〜チタタプ!」と楽しそうにはしゃぐアシリパと杉本。ほんと親子みたいに仲良しだなあ、わたしは嬉しいよ。

「…おが」
「いらん」
「ひと…」
「余程その口がいらねぇみたいだな」

銃を持ち出す尾形はずるい。だがわたしもアシリパの機嫌を損ねる訳にはいかないのだ。だって杉本!!基本的にわたしの味方してくれないんだもん!!(2対1デフォルト)

「半分食べよ、わたし残った半分たべるから」
「食わん」

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