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金塊が欲しいだけの金カム〜北海道横断紀


お金とは良いものだ、沢山あればあるほど良い。
平成生まれ、明治育ちキャッチ―なフレーズで本日まで生き残っているわたしは、杉本・アシリパという最も生存率が高いペアをトリオにした女!「まちはなんで金塊を求めるんだ」というアシリパの言葉に「己が欲する…欲望のためかな…」と包み隠さず答えた所為でちょっと好感度下がったけど気にしない。お金が!ほしいからあ!



江渡貝邸にて、土方組となんこ鍋を突くことになった。いやあ、壮観である。この中に人を殺したことがある人が混じっています、それはだれでしょうか。はいほぼ全員です。わあ、肉食獣の檻に入れられたウサギの気分だよ。もちろんアシリパは除くが。

「そちらのお嬢さんは」
「まちだ」

モツが噛みきれなくてエンドレス咀嚼していたので、代わりにアシリパが答えてくれた。口元を掌で隠して会釈すれば、ナイスミドルがにこりと笑う。やだ惚れる。ごくんとしっかり呑み込んでから、平成社会で身に着けた完璧な営業スマイルでご挨拶する。

「花酒まちです、訳あって同行させていただいております」
「まちは金塊がほしいそうだ」
「なにか理由がおありかな」
「理由なんてない、まちはただ金塊がほしいんだ 守銭奴だかr ぶぐ」
「ふふ、アシリパちゃん ちょっとお口チャックしようか」

嫋やかな笑みを崩さず、そっとアシリパの頬を摘まんだ。まあふわふわねぇ、おちょぼ口作って遊んでいたら「仲が良いな」と土方さんが笑った。いやだ、お恥ずかしいです。ちょっと互いに手加減しない仲なだけです。


家永さんの片づけを手伝っていたら、アシリパに置いていかれた。畜生、覚えてろあのアイヌ娘。仕方ないので、土方さんたちと一緒に刺青人皮の贋物に関して残されたてがかりがないか探すことになった。一応原作ファンなのでその辺りは知っているが、上辺だけでも手伝うフリは必要だろう。それとなく探す動作を混ぜて、動物の剥製を見物していたら。

ガシャンとガラスが割れる音がした。あ、ヤッベ。この後ここ燃えるじゃん。

「お嬢さん、奥に隠れていなさい」
「かたじけないデス!!」

ダッシュで逃げた。家永さんは牛山によって救出されるハズだ、一緒にいれば間違いないだろう。はぐれてしまったが、致し方なし。それまでは自己防衛しよう。

我が身を護れるのは己のみ。アイキャンドゥーイット、やればぁできるぅ。
魔法の呪文を唱えながらペンギンの剥製を脇に抱え、暖炉に火かき棒を突っ込む。防火手袋を嵌めていざという時用に炙っていると、銃撃の音が響き始めた。暫くして激しい闘争の音、そして扉が押し開かれ土方さんと二階堂が転がり込んできた。

土方さんの鋭い目と、視線が交わった気がする。
すかさず外套を被り顔を隠す、軍に人相がバレてないのは今のところわたしだけだ。このアドバンテージは捨てがたい。視線を低くして、違う扉から部屋から転がり出る。素人のわたしが土方さん相手に手伝えることはない。あ、ペンギンの剥製投げつけるくらいはできたかな。

「家永さん!」
「! 花酒さん、二階に兵士が!」
「え 非戦闘員のわたしにいわれても」
「おいきなさい!」
「なんで なんで なんで」

ホワーーーイ!
叫びながらも家永さんの謎の気迫に押され、杉本の到着を待たずに二階に上がるハメになった。勘弁してくれ、わたしは銃も扱えなければ刀もないんだ。

二階に上がれば案の定、ガツガツという耳を塞ぎたくなるような音がした。何が起こっているのかは知っている。あまり原作に関わりたくないのだが仕方ない、後で家永さんに何をしていたのと怒られるのもイヤだ。ある程度、実績を残さなければ。

ヘタに気配を消すのもおかしい、わたしのような素人にできることは勢いとノリの奇襲攻撃一回のみ。現場に転がり込み、尾形に馬乗りになっている兵士をアツアツの火かき棒で横殴りにした。ジュッと皮膚が焼ける音がした。やたらに暴れるだろうことは解っていたので、すぐさま飛び退く。ぐりんとこちらを向いた顔、血走った目に背筋が粟立つ。わたしを捕まえようと伸ばされた手を火かき棒でホームランすれば骨の砕けるような音がした。ゴメンね…イタそう…。

あとは彼に任せようと部屋の外に避難すれば、飛び起きた尾形が後ろから兵士を拘束した。そして腹に刺さった銃剣で兵士の腹を裂いた。わたしは見てられず両手を合わせて合掌した、いや半分わたしの所為だけど。

「花酒さん!」
「おそいぞ一等卒!」
「エ ご、ごめんなさぁい」

くわっと怒鳴れば、杉本がとたんに怒られた子犬みたいな顔をする。やめなさい、ちょっと可愛いじゃないの。尾形が絶命した兵士を自分上から退かして、血唾を吐いた。その音に気付いて杉本と尾形がにらみ合う。原作の軌道修正が入ったようだ。会話する二人を他所に、わたしはそっと兵士の傍にペンギンの剥製を添えた。お供えするものはこんなものしかなくてゴメンよ。

「花酒さん、行こう」
「オッス」

すたこらさっさと着いていこうとしたが、「オイ」と呼び止められる。
見れば銃を構えなおした尾形がわたしを見ていた。感情の読めない血まみれの顔に、思わず顔が歪む。うげぇ、いたそう。

「余計なことをするな、二度目はない」

どこか他人事のような言葉に頷いて走る。え、次尾形を助けたら、尾形がわたしを殺すってこと。それともお前なんかに助けられることは二度とないドヤァみたいなこと。わからん…尾形わからん…。

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