OTHER JUMP | ナノ

クロロ・ルシルフルに邪魔される休日


「なんだ、部屋を探しているのか」
「え、うわっルシルフルだ」

ヨークシンシティの外れ、穏やかな町並みのカフェ。そこでミルクティとケーキを啄ばみながら、雑誌を捲っていたら思わぬ客が来た。二人席の空き席に我が物顔で座るイケメンに思わず顔が歪む。

すると、黒真珠のような目が、にまりと楽しそうに笑った。

「なに?」
「いや…今日は休みか。人気のプロハンターが珍しい」
「それをいったらアンタもね」

そこらじゅうを練り歩いているブラックリストの盗賊頭が良く言う。
だが、彼は仕事用の黒いコートやオールバックを纏っていなかった。上下普通の黒パンツとシャツ、耳に着いた大粒のイヤリングはそのままだが、髪は下ろしもう化け物としか思えない童顔を曝している。

「10代に見える」
「ハハーまちは面白いことをいなあ。オレ今年で20だよ?」
「くるな化け物。女の敵」

ぎんと思わず睨んでしまうのは仕方のないことだろう。
しかもこいつベビーフェイスというか、女顔だし。ニキビないし、肌綺麗だし。くそ、流星街育ちのくせに!

「流星街育ちのくせに!」
「それをオレに正面切手いうのはお前くらいだよ。あ、ケーキ」
「ちょっと」
「ケチくさいこというな。可愛そうな流星街育ちに恵んでくれ」

人が頼んだケーキを勝手に食べ始めるクロロに舌打ちがこぼれた。一瞬置いて、ウェイターがコーヒーを運んできた。にっこりクロロが笑えばウェイターは愛らしく頬を赤らめ、わたしをちらりと見て帰っていく。真に遺憾である。

「あ、お姉さん。メニューください」
「で、一人暮らしどこでるんだ。このあたりか?」
「なんでアンタに教えないといえないのよ。寝首刈られたくないから言わない」
「まあ雑誌を見ればわかるが。そうか、この辺りか。いいな、オレこの辺りに宿を持ってないんだ」
「…それ、アンタの宿じゃなくて。アンタにひっかかった女の子の部屋でしょう」

じとりと見ていうと、クロロはにこりと笑って答えない。だが、それは答えのようなものだった。

「相変わらず不潔。女の子がかわいそう…注文おねがいしまーす」
「失礼だな。互いに合意の上だ」
「これと、これを」
「オレは宿を、相手はオレに抱いてもらえる」
「…」
「まちはこの手の話になると聴力が弱るみたいだな。聞こえますかー」
「耳たぶひっぱるな!いたい!」

その後もちょいちょい邪魔してくるクロロに、わたしはこの雑誌に乗っている家は全部止めようと心に決めた。ぜったいクロロ来る。こいつ無駄に記憶力いいから、わたしのドックイヤー全部記憶しているに違いない。

「お待たせしました。ガトーショコラと、焼きプリンです」
「あ、そっちにお願いします」

届いた注文はクロロに押し付ける。彼のせいで半分もなくなったケーキ皿を引き寄せると、クロロが少しだけ驚いたように目を丸くした。

「オレにか」
「あげるから黙ってて」
「…すごいな、オレが好きなもの覚えていたのか。驚くほどに他人に興味がなく、人のことなんてちっとも覚えていないまちが」
「うっさい。…アンタ、好きなもの変わらないし。食べ物に関しては時期選ばない偏食家だから」

ヒソカみたいに限定物好きや、イルミみたいに舌が肥えているわけでもない。だからクロロに何かをすることは苦ではなかった。なにを与えても文句言わないしね。こっちが選んだものが、外れることはない。わたし見たいなセンスに自信がない女でも、ある程度所視力を見せ付けられる。

「アンタにしかできないわ」
「…」

その後、クロロが妙に大人しくなった。
これはラッキーと雑誌を捲っていると、クロロがぼそりとつぶやいた。

「お前のそういうところ……良いよな」
「は?」
「オレはたまに、本気でお前にもてあそばれているのかと考えるときがあるよ」
「アンタみたいな危険物もてあそぶか」

はっきりと言えば、クロロはそりゃそうだと笑った。

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