OTHER JUMP | ナノ

中学生の遊城十代と夏の日の夢


「アイツと遊ばないほうがいいぞ」
「なんで」
「みんなケガするんだ」

そうして指さされた先にいたのは、深くキャップを被ってブランコを漕ぐ少年。
真っ赤なキャップが太陽の光できらきら光る。きいきいと寂しい音が響く公園で、わたしはようやくこの世界に生まれた意味を知る。

「おおおおお お名前おしえてください!!!」
「うわっ!」

がばあと膝元に座り込んで叫ぶと、少年はアーモンド色の目を丸くした。しかしすぐに欲しい答えをくれる。

「じゅ、 じゅうだい… ゆうきじゅうだい」
「およめさんにしてください!!!                                     あ、間違えた。おともだちからおねがいします!!!!!」





いま思いだしても、あの時かました土下座は素晴らしいものだったと自負している。そうひとり自慢するたびに、赤いキャップの少年…十代は、引き攣った顔で誤魔化してくれる。

「確かに、忘れられないインパクトだったな」
「いやいや 普通でしょう。 将来のお婿さんと出会った夢いっぱいの少女からしてみれば当然の反応。むしろ地味すぎるくらい」
「俺さ、この前まちみたいなやつなんていうのか教えて貰った」
「ほう」
「メンヘラ」
「じゅうだいのばかあああ!」

セーラー服が汚れるのも気にせずに蹲れば、十代がからからと笑った。ちくしょうアニメよりも性格悪いなこいつ!でもイケメンっジャニ顔のイケメンっ!日の光で熱いコンクリートがちりじりと頬を焼く、うぐーっと潰れた猫のような声をあげるとぴちゃんと頭に冷たい雫が落ちた。顔をあげると、青いパッケージの清涼飲料水が影を落とす。見上げれば十代がいて、背中に太陽を背負って立っている。

「ほら」

渡されたペットボトル。その中でたぷんと水が揺れた。受け取ってこくんと喉を潤せば渇きが癒えた。頬の汗を手の甲で拭って立ち上がる。十代はまだそこにいた、額に張り付いた茶色い髪、半袖から伸びる細い腕とか、擦れたスポーツバックとか。ただ全力で生きるひとりの男子中学生がそこにいた。その姿はあまりにも眩しくて、見ていられなくなる時がある_____

「わたしの未来の旦那様」
「まちは10年経ってもブレねぇな!」
「すきぃーーーー!」

がばりと腰に抱き付いたら十代が「うおっ」とよろめいた。肺いっぱいに吸い込んだ汗のにおいも、今ばかりは愛おしい。だって、あなたがここに生きているから。

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