Reborn! | ナノ

V.Dカフェテリアで六道骸をお誘いする


「ねえ、好きだよ」
「…」

さも当然の愛の囁きだというようなそれに、僕は冷静にコーヒーを噴出してしまった。

おおおお、おちつけぼく。いや、僕は冷静だ。いたって普通だ。確かに今日は2月で、14日で、世間一般でいうバレンタインデーにあたるが別にこの女になにも期待なんてしていない。前日にそれとなく示唆したにも関わらず僕の誕生日スルーし、クリスマスに友人とカラオケに行き、お正月は親戚とお参りにいった汐に、彼女のようなあまい役割は期待していない。

(おちつけ、おちつけ僕…)
「ねえむくろ」
「なんですか」

「好きだよ」

がしゃーん。
おおおおおおお、おちつくんだ僕!なに荒ぶってるんですか僕の右手!静まれ!

一拍置いて、店員が慌てて駆け寄ってくる。カップは床に転がったが幸いにも割れてなかった。ついでに僕が噴出したコーヒーをぬぐって真っ黒になったタオルも下げてもらう。本当にすみません。僕のせいじゃないんですよ、この女が悪いんです。小首をかしげてもダメですよ!僕は怒ってるんです!僕のオッドアイはいま君をにらんでいるんです!

「ああもう!そんな可愛らしく見つめて僕をどうしたいんですか!!」
「むくろ、落ち着いて」

がばりと机に伏せた僕を、汐が嗜める。周りでざわめきが大きくなった気がしたが些細なことだ。普段…滅多に愛を囁かない彼女が「好き」だと、僕にいってくれた。そのことがなにより重要なんだ。きっと地球が明日滅亡するといわれても、僕にとってはこっちのほうがよっぽどの緊急事態で。

(そんなこと…汐は解ってないでしょうけど、)

真っ赤な顔を見られたくなくて、くしゃりと前髪を撫で掴んだ。照れ隠し?そうですよ、悪いですか。僕のような異端児でも、普通に人並みの恋情はもちあわせているんです。…それも、汐に出会ってから、解ったことですけれど。

「汐、」
「ん?」

「Tu sei tutto per me.」

汐は眼を丸くする。それをじっと見据えていると、彼女はやがてふわりと笑ってこういった。

「Tira mi su

ああもういくらでも!

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