ぴんぽん、とインターホンが来客を告げ、高虎はノートパソコンから視線を外した。現在時刻は15時。今日は高虎も、そして吉継も午前で講義が終了だったため、部屋でそれぞれのんびり過ごしていた。
 高虎は正方形のテーブルの隣の辺で縮こまって炬燵に埋まる吉継に視線を落とす。来客は誰だが予想がついていた。吉継の客だ。だからお前が行け、と炬燵の中の吉継の体を蹴飛ばして告げたのだが彼は相変わらず鼻まですっぽりうずめたまま動かない。再び急かすようにインターホンが鳴らされる。
「吉継、あいつだろう。お前が出ろ」
「何度もお前が出ているのだから今更だ。俺は炬燵に食われているから出られない」
「引きずり出すぞ」
「俺が死んでもいいと言うのか」
 それくらいで死ぬか、と返す前に再びインターホン。しかも今度は連打である。近所迷惑もいいところだが彼の中ではすべて高虎が悪いということになっているのだろう。そろそろ出ないと近所と客から苦情が来そうだ。
 覚えてろよ、と吐き捨てて高虎は炬燵から足を抜いた。玄関に向かう背中にかけられた「高虎は優しいな」の言葉が白々しく聞こえるのは気のせいではあるまい。
 相手を確認することなく解錠しドアを開けてやると、綺麗な顔を寒さで赤く染めた訪問者は挨拶をすることもなく一言、
「遅い!」
「吉継に言え。あいつに会いに来たんだろう」
「お前だから言ったに決まっているだろう。吉継には言わん。寒いさっさと入れろ」
 仮にも客だろという言葉は呑み込んだ。言ったとしても、ならば茶を出せとでも返してくるに違いない。吉継の友、石田三成はそういう男だった。
 高虎をなかば押しのけるように入って靴を脱ぎ、揃えて脇に寄せた三成は手にしていた紙袋を高虎の胸に押し付ける。反射的に受け取ると、「左近からだ」と言い置いてさっさと居間へ歩いて行ってしまった。
 美味しいと評判の和菓子屋の袋を開けば、中身は饅頭3つと大福3つ、そして抹茶ロールだ。
 三成さんがすみません、と今ここにいない者の声が聞こえたような気がした。
 高虎は思わずため息をつくと、お茶を淹れるためにキッチンに向かうのだった。



吉継と高虎、左近と三成がそれぞれ同居してる設定だった。多分ちゃんとお付き合いしてる。
三成は吉継に会いに来てるけど高虎の顔だって見に来てる。言わないけど。
ちなみに何故ロールケーキなのかと言えば近所の和菓子屋に売ってるからです。おいしい…

2014/12/11 雑記
2014/12/29 加筆修正