「全員動くな!!」




突如現れた拳銃を持った男たちに銀行にいた人々はパニックに陥る。
強盗の一人は店長に金を出すよう指示し、残った三人は銀行内にいた客の手足を縛っていく。
それはコナンたち少年探偵団も例外ではなかった。


コナンはこの状況をどう打破するか必死に頭を回転させていた。
しかし自分の手足はきつく縛られていて、ほどけそうもない。おまけにお馴染み少年探偵団メンバーもいるのだ。
下手に自分が動いて彼らを危険にさらすわけにはいかない。
せめて博士か灰原がいれば良かったのだが、あいにく今日は別行動だ。




「(くそ……どうする…!?)」


「コナン君…どうしよう……」




歩美が不安そうにコナンの方を見る。彼女につられるようにして、元太、光彦もコナンの方を見ていた。




「…とりあえず、なんとかしてこのロープを…「おい!何話してんだ!!」…っ!」




四人でこそこそと話し合っていれば、それを目にした強盗の一人がこちらに近づいて来る。
拳銃を持つ男に怯えるようにコナンの後ろに隠れる歩美、元太、光彦。男はコナンたちを見て歪んだような笑みを見せた。




「フッ…ちょうどいい暇つぶしになりそうじゃねーか。支店長がちんたらしてんのに苛ついてるところだったんだ。…楽しませてくれよ?」


「なっ…!」




男はコナンたちに銃口を向ける。相変わらず笑みを張り付けたままで。
この光景を見て客たちから悲鳴が上がった。
男は大して気にする様子もなく引き金に手をかけ、そして…撃とうとした。…そう、男は撃とうとしていたのだ。この場に合わないようなメロディーが聞こえてくるまでは。




<死ねよ〜死んでくれよ〜土方ァ 頼むから死ん……>ピッ


『はいもしもしー?こちら紅藤でーす。何の用ですかー土方さん。こちとらヒマじゃないんですよ。今まさに銃口向けられてるんですよ。ピンチなんですよ』




突然鳴った不吉な呪文はどうやら彼女の着信音だったらしい。
強盗は縛ってあったはずの手足を自由に動かし、面倒くさそうに電話している少女紅藤あげはに銃を向ける。
しかしあげははそれに怯えることもなく、電話の相手との会話を続ける。




『……え?米花町の銀行に強盗が立てこもってる?知ってんですよそんなことァ。今そこにいるんだから。………は?捕まえろ?嫌ですよ面倒くさい。………え?報酬あるの?それを早く言えよ土方コノヤロー』


「(…何だこの人)」



コナンは電話を切ったあげはを呆れたように見る。
状況分かってんのかな、この人は。
おそらく他の客も店員も、強盗たちでさえそう思っているだろう。
当の本人は周りの視線を気にすることなく、隣で座っていた男に話しかけていた。




『銀時、銀時。こいつら捕まえたら土方さんが報酬くれるってさ』


「マジでか」



あげはの言葉を聞いた銀髪の少年坂田銀時は死んだ魚のような目をかすかに煌めかせる。
そうしてあげは同様、器用にロープを外し立ち上がった。
そして怪しく嗤う二人。




『さてと、』


「いっちょやりますか」




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