「……い……ろ…」


あたしの体を揺らすのは誰だ?お母さん?…いや、それにしては乱暴すぎないか?
疑問に思ったあたしは目を開ける。そこにはいなくなったはずの銀色。


「はよーあげは」
『……銀時?』


あたしの目の前には、お前全然起きなかったな、とケラケラ笑う銀時。
最後に見た時より若い気がする。
第一彼は、いやあたしたちは死んだはずだった。
言いたいことを十分に言えないまま死んだ。
じゃあこれは夢なのか。だけどそれにはリアルすぎる。もしかしたらあたしたちが死んだのもあたしが生まれ変わって高校生をやってたのもあちらが全部夢だったのか。


「おーい、あげはさーん?」
『ああごめん。おはよう、銀時』


久しぶりに声に出した名前に泣きそうになる。
その後銀時と何気ない会話をする。
それさえも懐かしい。
少しして、いきなり部屋の襖が開いた。


『…三人そろっていきなり女の部屋に入ってくるか、普通』
「貴様らが来るのが遅いからだろう」
「こっちは腹減ってんのに待っててやってんだ。早くしろよ」
「今日の朝は焼き鮭じゃきに!」
「てめーは作ってねーだろ」
「貴様もな」


入って来たのは小太郎、晋助、辰馬。
見慣れた、だけど懐かしいやり取りに自然と口元が緩む。
やっぱりこっちが現実なんじゃないかと思った。


早く着替えて来い、と小太郎が言って三人は部屋を出てった。
それに続いて出て行こうとする銀時を引き留める。


『…銀時』
「?どうした?」
『……あたしを一人にしないで』


それを聞いた銀時は一瞬驚いた顔をする。
だけどそれはホントに一瞬で、その後少し笑ってあたしの頭に手を置いた。


「当たり前だ。俺は…俺らは、お前を一人なんかにしねーよ」
『…うん』


その言葉に安心したあたしは銀時が出てった後、着替え始める。
そこでひどく睡魔に襲われた。


目を開けて飛び込んできたのは高校生なあたしの部屋の天井。
起き上がって辺りを見渡す。
そこにはあたしの机、クローゼット、時計、とあの場所にはないものばかり。
ああ、なんだ。あっちが夢だったのか。


「お前を一人なんかにしねーよ」


『……嘘つき』


下からお母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。




楽園の残像
(幸せだったあの日々に)
(戻りたいと思ってしまうよ)



−−−−−−−−−−−−−
また転生のお話。
なんかすごい悲しい話になっちゃいましたね…。
だけど転生にするとどうしてもこんな感じになってしまうという。


title:秋桜-コスモス-




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