※万事屋に夢主の一人部屋がある、爆豪の部屋の構造などいろいろ捏造注意




『………時計、壊れてる?』


ふと目を覚ましたら枕元の時計の短針が示す数字は7だった。つまり7時。昨日は日付を超えてすぐに寝たはずだから時計が表しているのは朝の7時で間違いはないはずだ。それなのに窓の外は真っ暗。


『いやいやいや、それにしても暗すぎないか…?』


窓の外は夜の暗さというより、闇と言った方がいいのではないかというくらいに暗い。何故だ。…とにかく一旦部屋から出て外を確認してみるしかなさそうだ。ただ単にあたしの部屋の窓に何かが張り付いているだけかもしれないし。
あたしは部屋を出るために唯一の扉である引き戸を開けて、そして閉めた。………ちょっと待って今なんか変だった。


『…うん、あたしってばまだ寝ぼけてるんだな』


目を覚ますように頬をベチッと軽く叩く。そして大きく深呼吸。……よし。


『…………ジーザス!』


思わず頭を抱えた。もう一度扉を開けてみたけれど、やっぱり目の前に広がる景色は先程と同じだった。ハンガーにかかっている服、タンス、カバンなど、これじゃまるでクローゼットの中身じゃないか。しかしあたしの部屋にはすでに別の場所に服などが仕舞ってある押入れがある。だからこの扉は確かにあたしの部屋の出入り口であるのだ。なのになんで部屋から出られないんだ。というかこの掛かってる服、明らかに男物じゃないか。しかも洋装。マジでどういう状況なのこれ。ちょ、誰かヘルプ!


『ん…?』


ふと服やタンスの向こう側からわずかに光が漏れていることに気付いた。これはもしかしたら外に出られるんじゃないだろうか。
あたしは服やタンスの合間を縫って光に手を伸ばす。そして壁に手が触れた。暗いけどわかる、これは扉だ。……これを開ければ何かが変わるのだろうか。そっと扉を押す。急に明るくなった景色にあたしは思わず目を細めてそして…ベッドに寝転がる薄い金髪の少年と目が合った。


「………あ?」

『すいませんお邪魔しました』


バタンッと思いっきり扉を閉める。その際にバキッとか嫌な音がしたけど気にしない。…え、ていうか…え?何?扉を開けたらその先に見知らぬ部屋があって見知らぬ少年がいたんだけどちょっと待って。夢か?これは夢なのか!?


『夢なら早く覚めてお願い300円あげるから!!』

「うるせェ!!」

『ぎゃっ!』


ガッと扉を開けられて、先程の少年が目の前に現れた。その顔は不信感と怒り。


「テメェいつから俺の部屋にいた…?勝手に人の部屋に入り込みやがって…殺すぞクソが!!」

『ちょ、タンマタンマ!落ち着こう!?一回落ち着いて話をしよう!?』

「なんで俺が不法侵入者の話を態々聞かなきゃいけねェんだ?ああ?………は、」


人ひとり殺しそうな顔をしていた少年があたしの向こう側を見て、表情を崩した。そりゃそうだ。自分の部屋のクローゼットの奥に、あるはずのない部屋があるのだから。


『…あたしもね、この状況がよくわかってないんだ。だから落ち着いて話をしよう』


少年は不機嫌そうに顔を歪めて、構えていた手を下ろした。…ていうかさっき、その手爆発してなかった?


***


「…つまりテメェはこことは違う世界から来たと、そういうことだな?」

『そうそう、その通りだよ爆豪君』

「そんな作り話信じられるかよクソ女が!」

『そんなバカな!』


あたしがやってきてしまったこの部屋の主、爆豪勝己は右手を爆発させてあたしを睨んだ。爆豪のその力は"個性"と言って、"この世界"では誰もが様々な個性を持っているらしい。おまけにその個性を生かしたヒーローという職業まであるらしい。この世界、というのはどうやらあたしは異世界に来てしまったらしいのだ。先程爆豪の部屋の窓から外の様子を見たけれど、そこに広がる景色は江戸と同じようで違った。
まず第一にターミナルがどこにもなく、その上天人たちの乗る船が空を飛んでいない。そもそも爆豪自体、天人を知らなかった。逆にあたしは爆豪やこの世界の人間が当たり前に持つ個性を知らない。つまり、結論からしてあたしは漫画でよくある異世界にトリップ、というものを体験しているらしい。勘弁してくれ。


『…あたしだって信じたくないけどさァ、しょうがないじゃん?実際あたしの部屋の扉はアンタの部屋のクローゼットに繋がっていて、窓は開きさえしないんだから』


爆豪だってその目で見たでしょう?
あたしがそう言えば、爆豪は舌打ちを零して、クソが、と呟いた。


『…あ、そういえばさ、爆豪って歳いくつ?』


何気なく爆豪に聞いてみる。身長は高めだけど、顔は少し幼さが残るし(ただし不機嫌さMAXの表情がそれを邪魔している)だいたい真選組の総悟辺りと同い年くらいだろう。


「…16」

『新八と同い年かよ!…いやー若いね』


新八と爆豪が同い年。…ダメだ、ごめん新八。どうあがいても爆豪の方がいろいろと上だよ。なんて考えていると爆豪が訝しげな表情で見ていることに気付いた。


『…え、何』

「…どう見たってテメェも俺と同じぐらいだろ」


舐めてんのか、と舌打ちされた。こいつさっきから舌打ちばっかりだな…って、え?爆豪とあたしが同い年くらいだって?そんなまさか。あたしはとっくに成人済みだ。
そう思って自分の身体を見ると(あ、まだ寝間着のままだ)あらびっくり。あたしの身体はそこまで変わらないものの明らかに若返っている。本当に爆豪と同い年くらいだ。マジかよ。


『マジかよ…』

「あ?」

『いや、なんでもない。確かにあたし、爆豪と同い年だったわ。……そんなことより、』

「テメェから聞いてきたんだろが!殺すぞ!!」

『さっきから暴言がひどい!…じゃなくて、あたし一度部屋に戻って着替えてくるわ』

「おう、そんで二度と戻ってくんな」

『冷たい』


ワッと両手で顔を覆って泣く真似をしてみせると、ハッと鼻で笑われた。この短時間でいろいろありすぎて心が折れそうだけど、とりあえず着替えだ着替え。爆豪の部屋のクローゼットを開けて中に入る。やっぱり奥にはあたしの部屋へとつながる扉があった。
部屋に戻ったあたしは寝間着を脱いで、普段から使っている黒い着物を着る。若返っているから多少服が大きい気がするけど、この程度なら特に支障はなさそうだ。


『さて…』


もう一度この扉を開けたら、先程のことなんてなかったかのようにいつも通りの日常が始まってほしいものだ。ふう、と軽く息を吐いて、あたしは扉を開けた。




Go ahead, Make my day.
(あー…)
(……チッ、クソが)
(人生、そう上手くはいってくれないらしい)


―――――――――――――
ヒロアカの混合夢小説って全然見かけないですよね、ってことで自給自足です。話を読んでわかるようにかっちゃん大好きです。まさかの主人公がでてこないパターン。
もうちょっと銀魂要素も他のキャラも出したかったんですが、長くなりそうなのでここで断念…。
話の中でも出てきたように夢主の部屋の唯一の出入り口とかっちゃんの部屋のクローゼットが繋がってしまったという設定です。つまり夢主、部屋ごと異世界にトリップ。

ちなみにタイトルの訳は「やれるもんならやってみな」的なニュアンスらしいです。


title:たとえば僕が




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