創立2年目の新設校、誠凛高校。 あたしはそこに入学した。理由は簡単。創立2年目ということは先輩が一つ上しかいないから。楽じゃね?ってことで。
『えーっと…あたしの席はっと…』
自分のクラスに入って席を探す。そこでふと目に入ったのはやけに背の高い赤髪の男。 うわあ迫力あるわ。
『あ、ここか』
あたしの席はその背の高い男の斜め後ろだった。 よかった、真後ろとかじゃなくて。絶対黒板見えないよね。
「あの…これ落としましたよ」
あたしが斜め前の男を眺めていたら、横から声をかけられた。彼の手にはあたしの手帳。 いつのまにか落としてたのか。
『ありがと………って黒ォォォオオオ!?』
「え……あ、紅藤さん?」
『ちょ、アンタなんでここに!?』
「それはこっちのセリフです。てっきり黄瀬君と同じ高校に行ったのかと思ってました」
『あー…涼太?うん…最初はそう思ってたんだけどね。アイツと一緒にいるとさ、』
『女友達ができないよね』
「……そういえば中学の時も桃井さん以外と一緒にいるのあまり見ませんでしたね」
そんなわけでアイツと同じところには行きたくなかったんだよねー、と笑えば黒もとい黒子テツヤは黄瀬君かわいそうですね、と言った。 まあ、モデルやってるアイツが悪いよね。中学時代なんてアイツの幼馴染ってだけで嫉妬の嵐だったからね。
『黒は部活どうすんの?…やっぱりバスケ部?』
「はい…」
黒が少しだけ悲しそうに笑う。 コイツは本当にバスケが好きだったから。だから中学の最後はあんなことになってつらかったんだろうな。
『…ま、アンタなら楽しめるよ、バスケ』
「ありがとうございます…。ところで紅藤さんはどうするんですか?」
『あたし?帰宅部だけど』
「…………」
しばらく黒と話していると、先生が教室に入って来た。なのであたしと黒はそれぞれの席に着いた。
***
入学して数日が経ったある日のことだった。
『……げ、涼太から着信5件?何の用だアイツ…』
昼休みに携帯を開いたら、幼馴染にしてモデルの黄瀬涼太から着信が入っていた。 …まあ、メールは毎日来てるけどね。返信あんまりしてなかったから電話かけてきやがったなアイツ。
『(………仕方ないな)』
あたしはおそらくいじけているであろう幼馴染を思い浮かべて、アドレス帳から彼の番号を探した。 おそらく向こうも昼休みだから電話しても大丈夫だろう。 数回のコール音のあと、聞きなれた声が聞こえてきた。
<もしもし、>
『着信5件とか何の用だコノヤロー』
<いきなり何スか!?……ってあげは!?ちょ、なんでメールの返事くれないんスか電話でてくれないんスか会ってくれな『うるさい切るぞ』…ゴメンナサイ>
『…で、電話してきた用件を十字以内でどうぞ』
<声が聞きたかった>
『しっかり十字以内かよ…チッ』
<ちょ、舌打ち聞こえてる!…だってあげは、俺に何も言わないで違う高校行っちゃうし寂しいんスよー…>
多分彼は今捨てられた犬のような顔をしているに違いない。見えないけど。 あたしは涼太に聞こえないようにひっそりとため息をこぼした。ああもう、めんどくさい。
『日曜日』
<へ……?>
『今週の日曜日なら会える』
<え、ちょ…>
『嫌ならいいけど』
<嫌じゃないっスよ!むしろうれしいって!じゃあ約束っスよ!!>
『はいはい。じゃあね』
それだけ言って電話を切った。 日曜に会った時にアイツになんかおごってもらおう。
「紅藤さん、」
『んぎゃっ!?……び、びっくりしたー。相変わらず影薄いね、黒…』
隣に来てたのに全然気が付かなかったや…。
『…で、何か用?黒…と、斜め前のデカいの』
「なんだよデカいのって!俺は火神だよ、火神大我」
「僕と同じバスケ部なんですよ」
『へー…。あ、あたしは紅藤あげはね。黒とは同じ中学』
「今日はそのことで話があるんです」
黒の言葉にあたしは首を傾げる。 何なんだいったい…? この時のあたしはきっと油断していた。だから次にくる彼の言葉なんか予想もしていなかったんだ。
「もう一度、バスケ部のマネージャーをやってくれませんか?」
未知を共に駆けようか (断る!) (なっ…即答かよ!) (入ってくれたらこの期間限定お菓子あげます) (しょうがないなー…。やってやるよ!) (変わり身早ぇなオイ)
−−−−−−−−−−−−− これはもし長編夢主が黒子のバスケの夢主だったらという話です。 なんか急に書きたくなった。全てノリで書きあげました。 やっぱり黒バスは断トツで黄瀬君が好きですね。彼、全然出てこなかったけど。 黄瀬君が夢主を「〜っち」と呼ばないのは認めてないとかじゃなく、小さいころからの付き合いの幼馴染でちょっと特別だから、みたいな…? ちなみに黄瀬君は夢主がどこの高校に行ったのか未だに知りません(笑)
title:たとえば僕が
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