「(なんとかして逃げねーと…!)」


コナンはそっと周りを見る。
幸い自分たちの手足は自由だ。隙をつけば逃げれるかもしれない。
男は匂坂とあと二人。決して逃げれないような状況ではないのだ。

ガチャ
不意に部屋のドアが開く音がした。
まさかまだ仲間がいるのか、とコナンは焦燥に駆られる。あと一人でも増えてみろ。自分たちが逃げれる確率が大幅に下がってしまう。

しかし、コナンのそんな考えは杞憂に終わる。
なんせ開いたドアから顔を出したのは見知った顔だったのだから。


『…………』

「「「…………」」」


ドアの向こうから現れたあげは。ちょうど男三人と目が合う。
そして少年探偵団たちの方に視線を移す。今度はコナンと目が合った。
数秒の沈黙のあとに一言。


『……あ、すいません。何かお取込み中だったみたいで。では!』

「待てェェェ!!」


ドアを閉めようとしたあげはに匂坂が待ったをかける。
それにあげはは面倒くさそうに顔をしかめた。


『はあ。なんでまたアンタらがここに…』


それはこっちのセリフだよ。
こんな状況でなかったらコナンはそう声に出していただろう。


「おいあげは。匂坂は見つかったのかァ?」

『ああ、晋助。うん、見つかった。余計なモンまで見つかった』


後ろからあげはに声をかけた高杉の言葉から察するに、彼女らは匂坂を捜していたらしい。
自分の名が出されて焦ったのだろう。匂坂はナイフを構えて声を荒げた。


「何なんだお前ら!警察か!?」


その言葉に高杉は心底いやそうにその整った顔を歪めた。
しかし応えたのは別の人物だった。


「俺たちをあやつらと一緒にしてくれるな」

『「ヅラ」』

「ヅラじゃない桂だ」


後から来た桂を先頭にあげは、高杉が部屋へと入る。
そしてあげははニヤリと笑った。


『どーも、初めまして。万事屋でーす』


"万事屋"
聞いたことのないその名に匂坂や他の男はいくらか安堵したかのように息をついた。

それに気付きながらもあげはは話を続ける。


『あたしたちはアンタに用があるんだよ、匂坂サン?アンタが殺した子のお兄さんがうちに依頼に来てね。アンタを捕まえてほしいんだと』

「俺たちは警察でも裁判官でも、ましてや正義の味方でもありゃしねェが、」

「あんな顔で頼まれたら断るわけにはいかんだろう?」

『第一、銀時がやる気だからね。あたしはそれに従うまで。…と、ゆーわけで、』


――その依頼。あたしたち万事屋が請け負ったのさ。


「ぎゃあ!」

「ぐあっ!」


あげはがそう言ったと同時に匂坂の両側にいた男たちが倒れる。
匂坂は焦ったように振り向くと、そこに立っていたのは…、


「話が長ーよお前ら」

「ドッキリ大成功じゃきに!アハハハ!!」


木刀を持って天井から降りてきた銀時と坂本だった。
ドッキリって呑気だな、この人。
コナンはこの状況で笑い続ける坂本を呆れた表情で見ていた。



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