――あげは


名前を呼ばれた。
振り向けば大好きな銀色。


銀時…?

そんなとこで突っ立ってるとおいてっちまうぞ

歩き出す銀時
あたしはその背中を必死で追いかけた
でも触れることができなくて


待って!銀時…!!


――――


『………夢?』


銀時に向かって伸ばしていたはずの手は空を切っていた。
その上あたしはベッドから落ちている。


『なんてベタな……』


まだぼーっとする体でもそもそと着替え始める。
ちなみに身につけていた着物は洗濯中なので借りたリナリーの服を着てみる。
歳は10くらい離れているというのにサイズがピッタリすぎて泣けた。

自室を出て食堂に向かえばすでにそこは人であふれていた。


「あげはおはようさー」

『ラビか、おはよ』


料理を頼むため列に並んでいればラビがあたしの後ろについた。


「よく眠れた?」

『おかげさまで』

「それにしても服のサイズピッタリさ」

『やめて!?気にしてんだから!!』


ラビと話しながら、料理を受け取って席に着く。
今日のメニューはパンケーキだ。さすがジェリーさん。見た目からもうとてもおいしそうです。


『いただきまーす』


ガチャンッ
あげはが食べ始めたと同時に皿の割れる音が食堂に響く。
何事かと一同が音源の方を見つめる。
そこにいたのは数人のファインダーとエクソシスト神田ユウだった。

事の発端はファインダーの男たちは先の任務で仲間を失ったらしく、己を責めていた。
そこに口を出したのが神田だった。うぜぇ、と一言。されど一言。
男たちの怒りを買うには十分だった。
頭に血の上った一人がテーブルを殴る。皿が割れたのはこのせいだ。
そして今に至る。

食堂全体の空気がピリピリと突き刺すようなものに変わる。
男たちを憐れんでいるのか、はたまた神田を軽蔑しているのか。

ラビが隣に座るあげはの様子を伺う。
彼女はまだここに来たばかりなのだ。こんなことを見て気分を害されないはずはない、と。
しかしそれは杞憂に終わる。


「……あげは、この状況でよく食ってられるさね」

『はっへははひひははんへーはひひ(だってあたしにはかんけーないし)』

「とりあえず飲み込んでからしゃべるさ」


あげははこの空気にもこの状況にも左右されずひたすら自分の食事に没頭していた。
おまけに自分には関係ないという始末。


「あげはって神経図太い?」

『何、いきなり失礼な奴だな』


あげはは口の中のものを飲み込んでから、ラビを睨む。


『だいたいね、あたしは…<ガシャンッ>……』

「うわっ」


突然あげはとラビの間に先程まで神田と言い争っていたはずの男が吹っ飛んでくる。
ラビが男の飛んできた方を見やれば、神田が立っていた。
ああ、ユウが投げ飛ばしたのか。

場の空気が一層鋭いものになる。
そこに響いた声はあまりにもこの空気に合わないものだった。


『神田てめっ、あたしのパンケーキに何さらしてくれとんじゃァァァアア!!』


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