忘却の彼方 | ナノ


手にしたのはガラクタ




あの後、屋上に向かったヒバリとディーノさん。そしてそれを見守るロマーリオさんとあたし。
別にあたしがいなくてもよくね?と思ったけれど、このまま授業に出るのも面倒だったので二人についてきたのだ。


「学校の屋上とは懐かしいな。好きな場所だぜ」

「だったらずっとここにいさせてあげるよ。はいつくばらせてね」


ヒバリのその言葉を皮切りに二人の戦闘が始まる。


『(ヒバリも確かに強いけど経験から考えるとディーノさんの方が上だろうなー…)』


二人の戦う姿を視界に入れながらそんなことを考える。
てかマフィアのボスと渡り合えるヒバリ…恐ろしい子!あたしだったら絶対無理。それ以前に戦いたくないわー…。

隣でロマーリオさんが感嘆の声を漏らした。やっぱりプロから見てもヒバリはすごいのか。


「(手を出すまいと思っていたが…)しょーがねえ」


初めてディーノさんが自分から攻撃を仕掛けた。


「甘いね。死になよ」


ヒバリはディーノさんの攻撃を避けると、トンファーを後ろに振るった。


『あ、』


あたしは思わず言葉をこぼした。上手いなーディーノさん。さすがだ。
ディーノさんの鞭は梯子の裏を通ってヒバリの右腕をトンファーごと封じていた。さすがのヒバリもこれは予想していなかったようで目を見開いている。


「お前はまだ井の中の蛙だ。こんなレベルで満足してもらっちゃ困る。もっと強くなってもらうぜ、恭弥」

「やだ」

「なっ」


ヒバリの返答に言葉を詰まらせたディーノさんはトンファーの攻撃を食らってしまう。


「てってめーなあ!」

「(直撃を避けた…?)」


その後二人は武器を構え直し、再び戦い始めてしまった。


***


『さて、あたしはどうするかなー…』


昼休み。ツナたちのクラスを覗いたらツナだけでなく獄寺、山本もいなかった。皆それぞれ修行をしているのだろう。
それに比べあたしはどうしたものか。
戦わなくていいと言うのは正直ラッキーな気もするが、武器はないとさすがにまずいだろう。そして竹刀ではおそらくヴァリアーと太刀打ちできない。


『木刀ってどこで買えるっけ…』


廊下ですれ違った何人かの生徒が驚いたように振り返ってあたしを見た。

学校を出て並盛町を歩く。
ヒバリとディーノさんは彼らなりの修業をしていくのだろうし、あたしがいてもきっと邪魔になるだけ。だったらあたしはあたしになりにヴァリアーとかいう奴らに備えて準備をしておくのが得策だろう。


『…とは言ってもなー。修行とか何それめんどくさい…』

「お嬢ちゃん、」

『!』


突然後ろから声をかけられた。振り返るとつなぎを着た男。
……おかしいな。ある程度の奴なら気配で気付けるはずなのに。あたしの感覚が鈍ったのか、それともコイツがただ者じゃないのか。
あるいはどちらも、かな…。


「紅藤あげは、だろ?」

『……その通りだけど。アンタ誰?』

「俺は沢田家光。ツナの父親でリボーンの友人だ」

『マジでか…』


ツナの父親でしたか!そんでもってリボーンの知り合いでしたか!


『…てか、ツナの父親ってボンゴレだったのか。あ、でもよく考えれば納得か…』


ツナが10代目に選ばれてるわけだし、何らかの繋がりがあってもおかしくはないよね…。


『で、そんなツナの父親があたしに何の用ですか?』

「んー?いや、特に用はないんだけどな…リボーンがあげはちゃんの話をしてて興味を持ったんだよ」

『リボーンが?』


アイツ、家光さんに変なこと吹き込んでないだろうな。


「…それで一つ聞きたいんだが、君は剣術を心得ているのか?」

『………まあ、人並みに剣は使えますけど。それがなんですか』

「リング争奪戦で君は直接戦いはしないが竹刀だけでは心もとないだろう?」


なんでこの人あたしが竹刀使ってるって知ってんの?……リボーンか?リボーンだな!あいつコノヤロウ!!
そして家光さんの言ったことあたしがさっき考えていたこととドンピシャだよ!


『…ちょうどあたしもそう考えていたとこですよ』

「ならば俺が刀を用意しようか?」

『刀、か…』


そういえばもう何年も真剣を握っていないな。竹刀を手にしたのだってつい最近だ。まあ、当たり前といえば当たり前なのだけれど。


『…いや、刀はいいです。今のあたしにそれは必要ないですから』

「…そうか」

『でもその代り用意してほしいものがあるんですけど…』

「?」


あたしはニヤリと笑った。
どうやら探し回る必要はなく楽に手に入れることができる、と。


『木刀が欲しいんです』






(きっと、)
(今はそれで十分だ)



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