忘却の彼方 | ナノ


何かが始まる音がした




『このバジルって少年が言ってたリング…?』

「あ…ロン毛の奴が奪ってったやつだろ?」


リボーンが言うには、そのリングは正式名称をハーフボンゴレリングといい、本来なら3年後まで保管されるはずだったボンゴレの家宝らしい。


「もしかしてすんげー高級な指輪だとか?」

「確かに値のつけられない代物だがそれだけじゃねーぞ。長い歴史上、この指輪のためにどれだけの血が流れたかわかんねーっていういわくつきの代物だ」

「ひいい、何それ―――!!マジかよ!!ロン毛の人持ってってくれてよかった―――っ」

『まったくだね。これであたしもこれ以上マフィアの危険な戦いに巻き込まれないで済むってモンだ』


あたしとツナはホッと息をつくが、ディーノさんは苦笑を浮かべてあるものを取り出す。


「それがなあ…ツナ、あげは…ここにあるんだ」


それはさっきバジルが持っていたものと同じ、リングの収まった小箱だった。


『「え゛え゛――――!?」』


マジですか。
どうやらバジルが持っていた方は偽物だったらしい。彼自身も偽物だとは知らされていなかったのだとか。
ディーノさん曰はく、ある人物からリングをツナに渡すように頼まれたらしいが。


「え―――!?また俺に!?なんで俺なの――!?そんな恐ろしいリング――!!」

「そりゃーお前がボンゴレの…」

「ス…ストップ!家に帰って補習の勉強しなきゃ!!ガンバロ!!」


ツナはわざとらしくそう言い残して、そそくさと部屋から出て行ってしまった。
一方、あたしはというと。


「何やってんだあげは」

『!……あ、あたしも帰ろうかなーと』

「窓からか?」

『………』

「あげは…お前な……」


あたしもツナに便乗して窓から脱走を試みたがリボーンに見つかってしまった。リボーンとディーノさんの二人から呆れたような視線を向けられる。


『しょ、しょうがないじゃん!ツナには置いてかれたしさあ!それにあたし風紀の仕事の最中だったんだよ!戻らないと咬み殺される!』


あたしはそこまで一気にまくし立てて言うと、じゃあね!と最後に言って窓から飛び降りた。
マフィアなんかより今は目先の委員長様の方が怖いよね!


***


そして今に至る。


「……で、仕事サボってどこほっつき歩いてたの」

『つ、ツナたちと一緒に銀髪ロン毛から逃げ回って、指輪について語ってました…』

「何それ。咬み殺されたいの?」

『ほほほホントだって!あたしだって好きで関わったわけじゃ…』


あ、でも首ツッコんだのあたしの意志だわ。そう思ったけど、決して口には出さなかった。
そんなあたしを見てヒバリはため息を吐く。


「はあ…もういいよ。この書類さっさと片しちゃって。あとお茶ね」

『あ、うん。りょーかいです』


あたしはヒバリに言われた通り、お茶を入れてマッハで仕事をやり始めた。そりゃもう本当にマッハで。ここでたらたらやってたら今度こそ制裁を食らいそうだ。

その日はマフィアのことなんかすっかり忘れて、風紀の仕事に追われて終わることとなる。
あたしが徐々に、そして本格的に巻き込まれていくのはもうちょっと先の話だ。






(…それで、何ともなかったの?)
(へ?…ああ、怪我とか?ないよー。心配してくれたんだ?)
(……違うから。君じゃなくて並盛の心配だから)
(え、それは本気?それとも照れ隠し?)
((どっちもありえそうだ!))




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