重なったのは残像 |
『ツナー…ホントにこっちであってんの?』 「…た、多分?」 あたしとツナはただ今林の中をがむしゃらに突き進んでいた。 あたしは迷っていたためツナに会えたのは好都合だ。ただツナ自身もあまり戻れる自信はないようだったが。…うん、不安しかないね。 「そういえばさっきから気になってたんだけどさ…」 『ん?』 「その袋に入ってるの何…?」 『ああ、これ?竹刀だよ』 あたしは袋から出してツナに竹刀を見せる。 随分と驚かれたが、護身のためだよ、と軽く流しておいた。 『…あ!ツナ、あそこに誰かいる!』 「ホントだ!やっと見つけた!!…え?あれって…写真で見た六道骸だー!!バックバック!…ほらあげはも!!」 『ちょ、』 あたしはツナに引きずられるようにして後ろに下がった。 てか、今六道骸って言った…?え、あの男が六道?じゃああたしがさっきまで話してた少年は? 『…どっちかが偽物なんだな、うん』 「急に何!?」 あたしたちは木の陰に隠れるようにその男、六道の様子を伺う。 黒曜中の制服を着てるけどあれ絶対中学生じゃない。 「…ん?獄寺君!!山本!!ビアンキが山本をかばって…!!」 ツナの視線の先には木にもたれかかって動かない山本と地面にうずくまっている獄寺の姿が。 あの二人相当ヤバい状態なんじゃ…。 あたしがどうするか悩んでいるとツナは木の陰から出て、息を吸った。 『え、ちょ、ツナ…!?』 「コラァ!!何やってんだ―――!!」 『アンタが何やってんのォォォ!?』 「ツナ!あげはもいたのか」 あたしが止めるまもなく六道に向かって大声で叫んだツナ。 そんな子供を叱るような言い方で何やってんだコイツぅぅ!ほら、皆こっち見てるじゃん!! ツナはリボーンの声で我に返ったような顔をしていた。 「あ゛」 「降りて来いボンゴレ、女」 「ひっ、いや…あの…」 『あ、あたしもッスか…』 最悪だ…。あたしはただヒバリに追がいかけるために来たっていうのにマフィア同士の抗争にどんどん巻き込まれて行ってる気がする。 それにあの男…相当強い。 「来ないのか?なら女を殺して待つ」 六道はビアンキに向かって鋼球を投げる。 あんなの一度でも当たったらひとたまりもないな…。 『……チッ』 「あげは!!ビアンキ!!」 「死ぬ気になるのは今しかねーぞ。暴れてこい、ラスト一発だ」 思わず走り出したあたしの横をツナが通り過ぎていく。その時ツナの額に炎が灯っていて、それを見たあたしは少し頬を緩めた。 ツナは鋼球をビアンキに当たる寸でで受け止めた。 「復活!!六道骸…死ぬ気でお前を倒す!!」 「最後の切り札だぞ。しっかり骸と決着をつけてこい」 対立するツナと六道の様子を伺いつつ、あたしはリボーンとビアンキの傍までやってくる。 「あげは…あなた何でここに…!」 『んー…成り行き?そもそもあたしはヒバリを探しに来ただけなんだけどなー』 ビアンキの言葉に苦笑する。 あたしだってまさかあんなとこでツナに会うだなんて思ってもいなかったわけだし。 「剛蛇烈覇!!」 六道の声であたしはツナたちの方を見る。 ツナは向かってくる鋼球の下を潜って走って行くと、そのまま六道を殴り飛ばした。しかし六道はすぐに立ち上がってしまう。 その後、六道は鋼球を宙に投げツナの方に走り出した。肉弾戦が始まる合図だった。 『あの男…』 「どうした」 リボーンの問いかけにあたしはツナたちから視線をはずす。一方リボーンはあたしの方を見てはいなかった。 『…大したことじゃないよ。あの男、少し違うなと思ってね』 「そうか」 あたしはそれだけ言ってまたツナたちの方を見た。 …こっちの六道はまるで殺しを嫌っているかのような、そんな戦い方だった。だって"あたし"とは明らかに違う。 そんなことを考えていたら六道の声がやけに耳朶に触れた。 「フィニッシュだ」 『!……ツナ、』 ツナは鋼球の下敷きになっていた。 prev next |