さよなら安穏 |
『……何、この状況』 放課後。あたしはいつものように応接室の前まで来ていた。 ただいつもと違ったのは部屋の扉が開かれたまま、というだけ。それだけだがアイツにしては珍しい。 そうは思ったもののあたしは躊躇わずに、応接室へと足を踏み入れた。 そしてこの光景を目の当たりにしたのだった。 あたしの視界に映ったのは倒れている三人の生徒に、トンファーを持った風紀委員長に、コーヒーを飲んでいるボルサリーノの子供。 これを一言で表すと。 『まさにカオス』 「ああ、君か」 『イヤ、"ああ"じゃなくて。…何があったのさコレは!十字以内で説明プリーズ!!』 「咬み殺した後」 『ちゃんと十字以内のくせになんてわかりやすい』 てか、よくよく見ると倒れてる三人は何かと有名なA組の山本武、獄寺隼人、そして沢田綱吉じゃないか。 「それじゃあ後処理は頼んだよあげは」 『なんであたし!?自分でやればいいじゃん!』 「僕はこの赤ん坊と話があるんだ」 そう言った男、並盛最強と謳われる風紀委員長、雲雀恭弥。 彼にしては珍しく楽しそうに口元を緩めた。…相変わらず笑うとますますイケメンなことで。 「ヒバリ、コイツは誰だ?」 「あげは?彼女は僕の…………パシリ?」 『オイコラ』 疑問形でパシリ発言をするヒバリに思わずツッコむ。 そしたら子供の方と目が合った。ニヤリと上げられる口角。…あ、嫌な予感がする。 「そうか」 子供はそれだけしか言わなかった。 少し予想外のことだったが長居すると面倒なことになりそうなので、あたしは今ちょうどやって来た草壁さんに頼んで三人を運ぶのを手伝ってもらう。 草壁さんが山本と獄寺を担ぎ、あたしが沢田をA組の教室まで運んだ。 『…よし、っと。ありがとね草壁さん』 「いや。これも委員長のご命令だからな」 相変わらずヒバリ命の草壁さんにお礼を言って、あたしは三人が目を覚ますのを待つことにした。 メンドくさいけどちゃんと説明はしないとね。 「ん……。あ、あれ!?ここって教室!?」 少し待っていると沢田が最初に目を覚ました。予想通り教室にいることに驚いているようだ。 『おはよー沢田』 「え!?あ、紅藤さん!?……獄寺君や山本まで!」 沢田は倒れている二人を見ると慌てて起こし始める。 …というか、なんであたしのこと知ってるんだろうか。あたしら一応初対面なのに。 「っ…10代目!ご無事ですか!?」 「う、うん。俺は大丈夫。二人は?」 「俺は平気だぜ、ツナ」 「俺もッス。……クソ、ヒバリの野郎!」 『…全員起きたみたいだし。あたしもう帰ってもいい?』 「あ、えと…ありがとね紅藤さん」 『別にいいけどさ、何であたしの名前知ってんの?』 そう言ったら沢田と山本が顔を見合わせた。どうやら山本も知っているらしい。知らないのは獄寺だけのようだ。 「結構有名だぜ?紅藤って」 『は?』 「風紀委員長のヒバリと仲がいいってな」 『あー……そういうこと、ね』 仲がいいかは疑問だけどね。ついさっきもパシリ扱いされたし。 「逆に紅藤さんはなんで俺たちのこと…?」 『、ああ。あたし全校生徒の名前と顔、全部記憶してるから』 「ウ、ウソォ!?」 「なんつー記憶力だよ…」 「ハハッ!すげーのな紅藤!」 あたしは一度見たものは忘れないという所謂【瞬間記憶】ができる。 そしてこの能力をヒバリに買われたっていうのもあたしがヒバリといる理由の一つだ。 ま、それはともかく。そろそろ戻らないとヒバリがうるさそうだ。 『…んじゃ、お互い疑問も解決したってことで。じゃあ「待て」……』 prev next |