糖分はひかえめで |
2月14日、あたしは今Ａ組の前に来ていた。 え？何故かって？…そりゃあ今日がバレンタインだからさ！この日のためにあたしは1週間前から準備をしていたのさ！ 普段からお菓子は作ってるし(甘い物を自家生産のため)、いつもより少し作る量が多くても特に難はないからね。 Ａ組の教室内では獄寺と山本が女の子たちに囲まれていた。獄寺は鬱陶しそうに、山本はいつも通りの笑顔で対応している。その反面、 『アンタは寂しそうだねダメツナ』 「そう思ってるんならわざわざ傷口えぐらないでくれる！？」 『京子からもらえた？』 「…………」 黙り込むツナ。その様子からするともらえなかったらしい。 …あ、でもさっきあたしがチョコを渡した時に今から作る的なこと言ってたからまだ希望はあるんじゃね？よかったねツナ！ 「……あげは、何その目」 『温かい目』 「…………」 『そんなことより。ほれ』 「そんなことって………ってこれチョコ？」 『一個ももらえてないツナにあたしからやるんだ。感謝しなよ？』 「あ、ありがとう…」 少し照れたように顔をそむけるツナ。何だその反応カワイイなオイ。 『あ、ホワイトデーは3倍返しね』 「(本来の目的はそっちか！！)」 『獄寺と山本にも作ってきたんだけど…』 「あー…あの中に入るのは、ね」 『そうそう。女の子の視線がね。…ただでさえヒバリといるってことで目ェつけられてんのに(いろんな意味で)』 「俺が渡しとこうか？」 『うん。よろし「10代目！」……』 獄寺に遮られた。 どうやら女の子に囲まれていることに耐えられなくなった獄寺がこっちに来たようだ。それに続いて山本も来る。 「なんでテメェがいんだよ！」 『そんなの決まってんじゃーん。はい、チョコ』 あたしは獄寺と山本にチョコを渡した。視線があたしに集まる。 ゴメンナサイそんな睨まないで！別にこの2人が好きとかそーゆーのじゃないんです！ 「俺にくれんのか？ありがとな紅藤！」 「…毒とか入ってねーだろうな」 『失礼だな』 山本は素直に受け取ってくれたっていうのに(素敵な笑顔というオプションが付いて)、獄寺は疑ってなかなか受け取らない。 アンタは何を疑ってんだよ！ 『…あたしからのチョコ、受け取ってくれないんだ』 「んなっ！？」 『せっかく獄寺のために作ったのに…』 「〜〜っ！し、仕方ねーな！受け取ってやるよ！ほら、よこしやがれ！！」 『(チョロイな)はい。……ちなみにホワイトデーは3倍返しな』 「それが狙いかテメェェェエエ！！」 「おう！楽しみにしてろよ紅藤！」 「山本はもうちょっと抵抗した方がいいと思うんだ！」 『じゃあねー』 あたしは背中に獄寺の罵声と女の子たちからの視線を浴びながらＡ組をあとにした。 ＊＊＊ ガラッ 『ヒバリー入ったよ』 「なんで事後報告なわけ？……何か用かい？」 『ほい』 「？」 あたしはソファに座ってヒバリの方にチョコを投げる。 「ワオ、チョコレートかい？」 『今日はバレンタインだからね』 「そのようだね。朝から風紀が乱れてる」 『ああ、だからあそこにチョコレートの山があるんだね』 あたしは入り口辺りに積まれているチョコの山に目をやる。 あれ全部没収品か。取られた人たちかわいそう！ 「応接室の前にも何個も置いてあるし。処分する僕の身にもなってほしいよ」 『………え？』 「？」 『いや、応接室の前にあったのってさ……』 「何？」 『…マジでわかってないの？』 応接室の前に置いてあったって…それどう見てもヒバリ宛じゃん。ヒバリってそういうことに鈍感なの？ もしかしたら没収品の中にもわざとヒバリに取らせたのとか紛れてるんじゃ…。 「………何なの」 『だからさー…応接室に置いてあったチョコはアンタ宛ってこと』 「僕に？」 『そう』 「…ふぅん。だとしても群れてる奴らからのチョコなんていらないな」 『アンタらしい言葉だね』 ヒバリは興味がなさそうに手元の書類の方に視線を戻した。 …ホント、モテるくせに勿体ない奴。 『あれ？でもあたしからのは受け取ってくれるんだね』 「…………」 『え、無視？』 ヒバリは無言のまま風紀の仕事を再開してしまった。 ちなみに没収したチョコはあたしの胃袋に入ることとなる。 (あ、ホワイトデーは3倍返しね) (へぇ……) (じょ、冗談だよ冗談！だから咬み殺そうとしないでェェ！) prev next |