忘却の彼方 | ナノ


少女たちと




『「チョコレートケーキ一つ……あ、」』


風紀の仕事の合間を縫ってナミモリーヌに来ていたら、隣の女の子と注文がかぶった。
その子は黒い髪をポニテールにしていて、可愛らしい。この制服は確か緑中だったかな。

二人で同じ注文をしたことで少し意気投合して、同じテーブルに座った。


「あ、ハルは三浦ハルっていうんです!」

『紅藤あげはだよ』

「あげはちゃんはここにはよく来るんですか?」

『うん。ここのケーキは絶品なんだよねー』

「わかります!何個でもいけちゃいますよね!!」

『いけちゃうね』

「ハルちゃん!」


あたしとハルが話していると、第三者の声が。そっちの方を振り向くとそこにいたのはA組の笹川京子。学校のマドンナだ。


「京子ちゃん!」

「ごめんねハルちゃん。待った?」

「平気です!それにあげはちゃんと今まで話していたとこですし」

「あげはちゃん…?」

『C組の紅藤あげはだよ、よろしく』


そう言ったらなんだかうれしそうな顔をされた。


「私、一度あげはちゃんとお話ししてみたかったの!」

『マジでか』

「あ、改めて笹川京子だよ。よろしくね」

『よろしく、京子』


てか、京子もあたしのこと知ってたんだね。あたしっていったいどこまで知られてんだろ。

京子はハルの隣に座る。この二人は前から友達で、ツナたちとも知り合いらしい。
ハルは将来ツナの嫁になるんだとか。


「そういえばあげはちゃんも最近ツナ君たちと仲いいよね?」

「はひ!そうなんですか?」

『あー…いや、仲がいいというか、巻き込まれてるというか…』

「「?」」


友達というにはまだそんなに仲がいいというわけでもないが、知り合いというにはなんだか他人行儀すぎる気がする。なんだこの微妙な関係。


「あ、そうだ!この後ツナさんちに遊び行きませんか?」

「そうだね。ランボ君やイーピンちゃんにも会いたいし」


ランボ、イーピンというのは確かツナの家に居候している子供たちの名前。二人の他にもビアンキというリボーンの愛人がいたな。ツナんちには。
この前泊まった時は久しぶりに騒がしい夕食を体験したっけ。


「あげはちゃんも一緒に行かない?」

『二人が行くんなら行くよ』

「それじゃあレッツゴーです!」


<〜〜♪〜〜♪>


ハルがそう言ったのと同時に鳴りだすあたしの携帯。短かったから今のはメールだな。


『…………』


そういえば、あたし風紀の仕事ヒバリに黙って抜けてきてたんだっけ……。
案の定送り主はヒバリだった。本文には10秒で来ないと咬み殺す、のみ。
…いやもう、これどうやっても咬み殺されるの決定だね!10秒じゃ何もできないもの!


『…ゴメン二人とも。あたし用事出来ちゃったから行くね』

「はひ、それは残念です…」

「じゃあまた今度行こうね」

「そうですよ!また一緒にケーキも食べましょう!!」

『おーいいね。また誘ってよ。…じゃ、バイバイ』


あたしは店を出た二人に手を振って、並中への道を走った。そりゃもう全速力で。
途中ですれ違ったツナ、獄寺、山本が奇怪なモノでも見るような目で(山本はいつも通り笑ってたけど)あたしを見ていたことにも構う余裕がないくらいに。





(ただいま!…ふぎゃっ!)
(遅いし何ドア壊してるの?咬み殺されたいの?)
(いやもう咬み殺してんだけど!?)



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