忘却の彼方 | ナノ


見舞いとゲーム




委員長が入院した。
そんな言葉を草壁さんから聞かされたのは、あたしが朝一で応接室に行った時だった。


『…って入院!?あの人を常に病院送りにしてる戦闘狂が!?……ああ、ついに報復でもうけたのか』

「いや、真顔で何言ってるんだ紅藤」


風邪だ、風邪。
そう言った草壁さんにそんなことで入院!?、とツッコんだあたしは間違っちゃいないだろう。


***


そんなこんなでヒバリの見舞いにやって来たあたし。
今は院長の案内でヒバリの部屋の前までやってきた。


「いいかい?くれぐれも雲雀君の機嫌を損ねないようにね」

『アンタなんか弱みでも握られてんの?』


なんだが妙に怯えている院長が去って行くと、あたしはそっと扉を開けた。


『(寝てる…)』


ヒバリは小さく寝息を立てて、ベッドで寝ていた。
こうして見ているとまだ少し中学生らしい幼さが残っていてカワイイ。普段のアイツからは想像できないけどね。


『(写メでも撮っとこ)』


そう思いついたあたしは部屋に入って、携帯を出す。そしてカメラをヒバリの方へ向けた瞬間、何かがすごい勢いであたしの頬をかすめた。直後に破壊音。


『…………』

「やああげは。携帯を出してどうするつもりだい?」

『い、いやぁ…アレだよアレ……えっと…と、とりあえずすんませんでしたァァ!!』


あたしの横を通り過ぎていったのはヒバリによって投げられたトンファーだった。


『…せっかく見舞いに来たのに元気そうじゃん。……チッ弱ってる姿笑いに来たのに

「聞こえてるんだけど。…もう治りかけてるよ。入院は念のため」

『へー…。ヒバリでも風邪ひくんだね』

「君はまったくひかなそうだね」

『それはアレか。あたしがバカだと言いたいのか』

「それ以外に何があるの」

『なにこいつムカつく』


涼しい顔で言ってのけるヒバリを殴りたいと思った。しかしここで手を出すと後が怖いのでやめておこう。


『…ところで気になっていたことがあるんだけど、』

「何?」

『そこに倒れてる奴らは誰?』

「ああ。退屈だからちょっとしたゲームをやっていてね。その敗者たちだよ」

『………ちなみにどんなゲームで?』

「僕を起こしたら咬み殺すゲーム」

『なんて理不尽なゲーム!』

「君もやるかい?」

『丁寧に断らさせていただきます』

「ふぅん。つまらないな」


病院でもこんなことやっているのと、あの院長の態度から察するにこの病院もヒバリの配下だな絶対。
ホントにコイツは中学生なんだろうか。


「ねえ、あげは」

『んー…?』

「喉かわいた。飲み物買ってきてよ」

『自分で行けば?』

「病人に行かせる気?」

『………はあ。わかったよ、もう』

「これで君の飲みたいモノも買ってくるといいよ」

『おー…。ちなみに何飲む?』

「緑茶」

『りょーかい』


あたしがそうやってちょっと部屋を出ている間にツナがやってきたのはまた別の話。





(あげは!?なんでここに…?)
(それこっちのセリフだよツナ。つーかなんでそんなボロボロに…)
(ゲームに負けたからだよ)
(…えーと、ご愁傷様)



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