忘却の彼方 | ナノ


花火にうつした夢




***


境内まで行くとガラの悪そうな男たちとそいつらに囲まれているツナがいた。ヒバリはそんなこともおかまいなしに一人の男をトンファーで倒して笑った。


「うれしくて身震いするよ。うまそうな群れをみつけたと思ったら追跡中のひったくり集団を大量捕獲」

『一石二鳥でよかったねェ。…じゃ、あたしはあっちで見てるから』

「ヒバリさん!!あげは!!」


あたしはどうせヒバリたちが倒すだろうと離れて見守ろうとした。が、その前に男が逃げ道を塞いでしまう。
わお……。


「んだっ、コイツらは」

「並中の風紀委員だ」

「集金の手間が省けるよ。君たちがひったくってくれた金は風紀が全部いただく」

『えええええええ』

「(またあの人自分の事ばかりー!!)」


そんな魂胆があったとは知らなかった!てゆーかそれツナたちの金だし!


「ムカツクアホ共が二人に美人な女が一人。ちょうどいい、中坊一人しとめるために柄の悪い後輩を呼びすぎちまってな」

『聞いたヒバリ!?今あの人あたしのこと美人だって!!見る目あるぅー!!』

「ただのお世辞かあの人の目が腐ってるか、どっちがいい?」

『何その二択』


それどっちをとってもあたしが美人じゃないって言ってるようなもんじゃないか。

そんな会話をしているうちに数えきれないほどいる不良たちはあたしたちを取り囲む。


「何人いるのー!?」

「加減はいらねぇ!!そのいかれたガキ共もしめてやれ!!」

「ヒバリさんでもこの数はやばいんじゃ…!あげはだっているのに…!」

「だったらお前も戦え」


ツナの慌てる声に応えるようにリボーンの声が聞こえた。その直後に最近すっかり慣れてしまった銃声。


「復活!!死ぬ気でケンカー!!」

「余計だな」

『やっちゃえ二人ともー』

「たかが中坊二人に女が一人だ!一気に仕掛けろ!!」


不良たちが襲いかかろうとした瞬間、爆発音が響く。


「10代目!!」

「助っ人とーじょー」


そこにいたのは獄寺と山本だった。二人はツナの隣まで来る。二人が現れたことによって不良たちの怒りが最高潮に達したようだった。


「気にくわねーガキどもがゾロゾロと」

「ヒバリとあげはとのの共同戦線だな」

「冗談じゃない。ひったくった金は僕がもらう」

「なぁ?」

「やらん!」

「当然ッス」

『てか、あたしも戦う感じ…?』


あたし丸腰なんだけど。それこそ冗談じゃない。

あたしたち5人は背中合わせに男たちを倒していく。と、言ってもあたしは皆から見えないように最低限の人数をのしているだけだけれど。
あ、でも途中でリボーンと目が合ったからコイツだけはあたしが戦っているのを知ってるのか。

ツナたちと男たちの力の差は圧倒的で、瞬く間に男たちは地に伏すこととなった。
その後に盗まれたツナたちの売り上げ金を巡り少しいざこざがあったが、ツナたちの意地によりお金は守られた。よかったね。


***


ツナたちと別れた後、あたしとヒバリは帰るついでに最終的な見回りをしていた。


『あーあ…結局何も食べられなかったなー…』

「……何が食べたいの」

『へ……?』

「今日は思いのほか稼げたしね。おごってあげるよ」

『え゛!?怖い怖い怖い!!アンタがおごってくれるとか明日槍でも降るんじゃない!?』

「ふぅん…」

『ウソですごめんなさいぜひともあなたにおごっていただきたいな!』

「…で、何がいいの?」

『え、うーん……あ、』


あたしの視線をヒバリが追う。


「リンゴ飴?」

『うん。祭りに来ると必ず食べるんだよねー』

「じゃあこれで買ってきなよ」

『ん、ありがと』


あたしはヒバリからお金を受け取ると屋台の方まで走って行った。
ヒバリはあたしが戻って来るのを待っててくれるようで、待たせるのはなんだか気が引けたから。

あたしがリンゴ飴を受け取ったと同時に、空に花火が上がる。


『う、わ……』


それは思わず感嘆してしまうほど綺麗だった。





(ねえ、ヒバリ)
(何だい?)
(来年もまた花火見たいねぇ…)
(…そうだね)



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