忘却の彼方 | ナノ


それは白銀の、




想像を絶するサバイバルな雪合戦はどのチームも互角だった。
ビアンキ率いる毒牛中華飯はビアンキ特製雪玉ならぬ毒玉を投げ、ディーノさん率いるキャバッローネチームは銃で実弾入り雪玉を撃ってきたり。


「もう遊びの域こえてるよー!!」

『(激しく帰りたい)』


雪合戦ってこんなに過酷だったっけ?雪合戦ってこんなに犠牲が出るものだったっけ?
こんなことならヒバリと一緒に暖房のきいた応接室で書類を片していた方がマシだったわ。

あたしとツナはディーノさんとビアンキが戦っている間にレオンを追っかけるが、二人がそれに気づきこっちに標的を定める。


「そうは」

「させねーぜツナ!あげは!」

「うわ――――っ!集中砲火だー!!」

『これヤバくね?』


毒玉と実弾入り雪玉がこっちに迫ってこようとしたその時、


「やっぱり我慢できないよ。みんなそろってるんだもの、ランキングせずにはいられないよ」


そう言ったフゥ太の周りが無重力になる。


『何あの子エスパー!?』


ツナがフゥ太はランキングをしているのだとか言っていたけど、全然わからない。一つわかったのはこの子も一般人じゃないということだけだ。
まあ、とにもかくにもフゥ太のおかげで雪玉は防げたのだけれども。

その後フゥ太のランキングで山本がレオンを追いかけるのが得策だと知ったあたしたちはさっそくその作戦に移った。


「2倍ボム!」

『雪合戦関係なくね!?』


さっきまでもギリギリだったが獄寺がダイナマイトを投げたことによって、ただの合戦になった。
そしてそれを契機にお互いの攻撃はますます激しくなり、次々と皆がリタイアしていく。


「お!ラジコンはあそこだな?」

『ラジコンて…』


少し目を離した隙にレオンは階段の手すりを登って行ってしまった。


「お先!」


ディーノさんが真っ先にレオンを追いかける。


「ああ!先を越された!」

「まあ、落ち着けツナ。俺にまかせとけ」


そしてその後を山本が追いかける。が、おわっ!というディーノさんのなんだか間の抜けた声が聞こえると…


「ミスった!」


転んで大きな雪玉となったディーノさんが階段から転がって来た。


「何をミスしたらこーなるんですか―――!!」

『ああ、そういえば部下がいなかったね…』


あたしが冷静に判断しているうちに、雪玉となったディーノさんに巻き込まれ山本もリタイア。
二人そろって雪玉から顔だけ出している姿はなんだか間抜けだ。二人とも楽しそうだったけどね。


「ラッキーだわ、これで主力はだいぶ減ったわね、残るはツナ、あげは、ハヤト、フゥ太、そしてロマーリオのみ」


毒玉を投げながら、笑うビアンキ。しかしディーノさんも笑みを浮かべた。


「そいつぁーどうかな、ダイナマイトで溶けた雪の上にあいつを落としちまったみたいだ」

『「あいつ…?」』

「はっ!」


ツナがビアンキの足元を見る。そこにいたのはダイナマイトの熱で溶けた雪の上に転がるエンツィオだった。
案の定巨大化したエンツィオはそのまま雪の上へと倒れていった。どうやら冬眠していたらしい。
ていうか、


『残ったのあたしらだけだよ、ツナ』


あたしとツナ以外はエンツィオの下敷きになりリタイアとなってしまったから。


「ええ!?残ったの俺らだけ!?」

「強運もボスの資質だぞ」

「あのラジコン捕まえてケリをつけてこい!」

『がんばれーツナ』

「あげはすでにやる気なし!?」

「さっさと決着をつけてこい、でないと皆の魂もうかばれないぞ」

「勝手に殺すな――!!」


ツナはリボーンの言葉にツッコみながらもレオンを追いかけていった。
……あれ?あたし何かを忘れてない?そういえばなんやかんや雪合戦に参加しちゃってるけど、あたしがここに来た理由って……、


「何これ?あとそのデカいカメ」

「ヒバリさん!!」

『………ヤベ』


レオンを持っていたのはヒバリだった。
ああ、思い出した。あたし、ヒバリに様子見てくるように言われたんだった……。


「なんでヒバリさんが日曜日に!?」

「せっかくの雪だ、雪合戦でもしようかとね」

「(ヒバリさんも!?)」

「といっても群れる標的にぶつけるんだけど、それに今はその標的を探してるとこなんだ」

『(さっき言ってたアレか!つーかなんでコイツ捕まらないの!?)』

「ここで会ったのも何かの縁だ、今日は君を標的にしようかな。……それともなかなか戻ってこない上に群れていたあげはにするか」

『すいませんしたァァアアアア!!』


睨まれた。思いっきり睨まれた。
忘れてたんだよゴメン!!

ヒバリはいつの間にか球形になっていたレオンをあたしたちの方に投げようとする。その時、あたしはいつでも避けれる準備を、ツナは何かを盾にした。
が、いつまでたっても衝撃がこない。


「…と、思ったけど風紀委員の仕事がたまってる。行くよ、あげは」

『い、いえっさー…』


よかった。危機は何とか免れたらしい。


『久しぶりだったなあ、雪合戦なんて…。何年振りかなー…』

「君はたまに年寄りくさいこと言うね」

『アンタは常にひどいこと言うね』


ヒバリの隣を歩いていたあたしは一度立ち止まって振り返る。
そこは辺り一面白銀の世界。

―――なんだか懐かしい声が聞こえてくるような気がした。


「あげは?」

『…なんでもない』


あたしは少し笑って、少し先を行くヒバリを追いかけた。





(…ねえ、なんかとてつもない爆発音が聞こえたんだけど)
(あの草食動物たちが何かしたのかもね)
(ツナたち生きてるかなー…)



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