忘却の彼方 | ナノ


彼と彼女の関係




『オムライスできたよー』

「ワオ、ちゃんと食べれるのかい?」

『失礼な。あたしの料理歴を何年と心得る』

「…見た目は普通だね」

『話聞いてた?』


ヒバリはコタツに置かれたオムライスを見て呟く。
言っとくけどあたしはこの世界に生まれる前から料理してるからね?普通の中学生より料理できるに決まってるでしょーが。


『「いただきます」』

「!」

『どうだ。上手いだろ?』

「……悪くないね」

『でしょ?』


……そういえば誰かに自分の料理を食べてもらったのは随分と久しぶりだ。やっぱり温かいな、誰かと食べるのは。


「何にやけてるの気持ち悪い」

『ひどい』


顔に出ていたらしい。だからって気持ち悪いはひどいと思うけど。


「次はハンバーグ作ってよ」

『次は…ってまた来る気かアンタ』

「君の家の方が学校に近いからね」

『帰るの面倒くさいだけじゃん』


てかヒバリってハンバーグ好きなのかな?なんか意外。
あたしは食べ終わった食器をキッチンに運ぶ。ヒバリはテレビをつけてまたミカンを食べていた。
アイツホント自由だな。


『…それで?アンタはいつ帰るの?』

「帰らないよ」

『え、』

「今日はここに泊まる」

『いやそれはマズイでしょ!?』


仮にも女子の一人暮らしの部屋に男が止まるとかさァ!
…いや、あたしはもう女子っていうか実年齢的にはとっくにアラフォーなんだけども!中学生のヒバリとは何もする気ははいけども!


「平気だよ。別に君のことを女子だと思ってないしね」

『それはそれで大問題だバカヤロー』

「お茶入れてよ」

『…………』


もう泊まるの決定ですかそうですか。……もう好きにすればいい。
抵抗するのもメンドくさくなってきた。


『…泊まるのはもういいとして、着替えとかないけど』

「持ってきたから心配ないよ」

『最初っから泊まる気満々じゃねーかオイ』


はあ、とため息を吐いた。
自分の家にいるのになんで疲れてんだろあたし。あんなに居候のいるツナは疲れないんだろうか?アイツすごいな(実際は苦労してる)

……まあ、誰もいない冷たい部屋より今くらい騒いでいる方があたしには合っているな、なんて。
ヒバリには絶対言わないけれど。

この日を境にヒバリがちょくちょくうちに来るようになったのは言うまでもない。





(そういえばベッド一つしかないんけど)
(仕方ないな。僕がベッドで寝てあげるよ)
(何でだよ。テメェはソファにでも寝とけや)



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