迷子になったら警察へ


――あげはside――


<〜〜〜♪〜>


『あ、携帯……?』


銀時を見失った後、立ち尽くしていたあたし。
そんな時、懐に入っていた携帯が鳴った。おそらく小太郎だろう。

ディスプレイを見れば案の定<ヅラ>の文字。
きっと心配させちゃったんだろうな…。そう思いながら電話に出た。


『もしもし…?』

「あげはか?何している」

『うん。ごめん』

「何かあったら携帯に連絡しろと言っただろう」

『うん……』

「今、沖田殿がお前を捜しに行った」

『総司が?』

「そうだ。だから早く合流して、今日は戻ってこい」

『…わかった』


総司、捜してくれてるのか。小太郎も晋助も、きっと千鶴や皆も心配してくれている。


『ごめん、銀時。必ず見つけてみせるから』


――だから、少し待ってて。
小太郎との電話を切ったあたしは、一人呟いた。

パチンッ


『よしっ』


気合いを入れるために頬を叩く。
ネガティブだなんてあたしらしくないじゃないか。大丈夫。銀時とはまた出会える。

あたしは総司を捜すべく、走り出した。正確には走り出そうとした。
一歩踏み出したところで、ある重大なことに気付いて立ち止まったのだ。

……そう、それは。


『合流って、どうやって……?』


――だから早く合流して、今日は戻ってこい。
小太郎の言った言葉。いや、マジでどうやって…?
あたし、総司がどこにいるかとか全然知らないんだけど……。それどころかここがどこだかもわからないんだけど……。


『夜になる前に帰れんのかコレ……。イヤイヤイヤ帰れるよ、ウン!』


一抹の不安を首を振って振り払った。


***


『み、見つかんない……!』


総司の"そ"の字すらでてこない。
辺りは大分暗くなってきた。
ヤバいヤバい。コレはヤバい。

意外ともう帰ってるのかも、と思ってさっき小太郎に電話したけどまだと言われた。
そしてあたしはどんどん人がいない方に行っている気がする。


『総司ー?総司くーん…?お願いだから返事してくれェい!!』


シーン……
返事はなく、あたしの声が響くだけだった。


『うう…。どうしよう……あ、』


気配で探そう。
実をいうとあたしは気配を感じるのが得意だ。とりあえず人の気配を捜して、そっちに向かってみよう。

目を閉じて、五感全てを周りに集中させる。


『…あっちから刀のぶつかり合う音がする?』


少し離れたところから音がすることに気付いたあたし。
もしかしたら総司かもしれないと、そっちに行ってみることにした。

少し走ればすぐに音がした辺りにたどり着くことができた。
そこにいたのは刀を持って何かを言っている総司と、怪我をしているのか肩を押さえている……、


『銀、時……?』


その銀色を見た瞬間。あたしの中で何かがざわりと蠢いた気がした。

ガキィッ
アイツに向かって振り下ろされる刀を木刀で受け止める。
自分が木刀なのに舌打ちして、総司の持つ刀を弾き飛ばした。


「あげは、ちゃん……?」

「お前…」


二人の戸惑ったような、驚いたような声。しかしそれはあたしの耳には届かなかった。


『いくら、総司であろうとも…コイツを傷つけるのなら許さない』


コイツを、銀時を護るのが、あたしの役目だ。




(彼女から放たれる殺気は)
(本物だった)


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