『は?今晩寺の周りを探索?あたしらが?』

「ああ、志士たちがすっかり怯えてしまってな」

「ハッ、どいつもこいつも情けねーなァ」


夕食を食べ終えた後、あたし、銀時、小太郎、晋助、辰馬は一つの部屋に集まっていた。
小太郎が言うには、近頃あたしたちが拠点としている廃寺の周りで子供の泣き声がするらしい。しかし捜してみても子供は見当たらないという。


『それって明らかに幽れ…「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」…ちょ、銀時うるさい』


幽霊が苦手な銀時は今の話を聞いて顔を青くし、ガタガタと震えている。本人は断じて認めないが。


「なんじゃ金時、怖いがか?」

「こここ怖くなんかねーよ!!てゆーかスタンドなんてこの世にいねーし!?」

「銀時、テメェの後ろに…」

「ぎゃあああああああ!!」


とりあえずさっきからこんな感じなのだ。晋助と辰馬が面白がり銀時をからかう。そして銀時はあたしに抱きつく。
今は夏。自分よりも大きな男にくっつかれては暑くてしょうがない。


『……それで、どんな感じで見回るの?』


あたしはいまだに騒いでいる三人から視線を外して小太郎を見た。


「そうだな……二手に分かれ、それぞれ反対方向に寺の周りを見て行こう」

「それじゃあ組み分けじゃんけんするぜよ!」


さっきまで晋助と銀時にちょっかいを出していたはずの辰馬が割り込んでくる。
まあ、じゃんけんに異論はないからいいけど。


***


『銀時……暑っ苦しい。離れて』

「!お、俺はお前が怖いと思ってなァ…!!」

『いや、あたし別に幽れ…「スタンド!」……スタンド怖くないし』


むしろあたしは霊感強くて普通に見えるタイプだ。

先程のじゃんけんでペアとなったあたしと銀時は今近くの林の中を歩いていた。
片手には明かり。片手には銀時。両手塞がってるんだけど。せめて銀時が明かりを持ってくれればいいのに、前を歩くのは嫌らしい。


『子供の声、聞こえないね』

「へ?あ、ああ。そうだよなあそこの団子うまいよな!」

『何の話』


こいつ、耳まで塞いでやがる。
もはや銀時は何の役にも立たなかった。

それからけっこう見回ったがそれらしい声は聞こえてこない。なんか嫌な感じの気配はするんだけどな。


『………あ、』

「なななな何だよ!?」


あたしは不意に銀時の後ろを見つめ、呟いた。それに肩を震わせる銀時。


『………』

「あげは?何黙ってんの?ねえ!」

『んー?いや銀時の後ろにいるあれ、』

「ぎゃあああああああああ!!」

『え…?』


銀時の後ろにいるあれ、小太郎たちじゃん?
そう言おうとしたのを銀時に遮られた。その上、勘違いした銀時がしがみついて来るもんだから支えきれなくて二人で地面に倒れた。
はたから見れば、暗い林で男が女を押し倒しているようにしか見えない。


『いてて、違うって銀時。あんたの後ろにいるの小太郎たちだから!』

「へ……?」

『そしてさっさとどいて!この体勢あいつらに見られたら何言われるか…』

「もう遅ェよ」


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