『(…なんだかなー)』


酒を一気に流し込む。そして隣に座る銀色をちらりと横目で見た。
こいつに隠し事は無理かもしれない。
今度はあげはがため息をこぼした。


『……ただ……に……だよ』

「あ?」

『ただこんな時間が続けばいいのにって思っただけだよ』

「………」

『ね?大したことじゃないでしょう?』


銀時は苦笑を浮かべるあげはを一瞥すると、坂本と顔を見合わせ、桂と高杉を呼んだ。
銀時の行動を意味が分からないという風に見ているあげは。当の本人は何やら三人と何か話している。
しばらくそうしていた四人は、にやにやと笑みを浮かべながらあげはの方を振り返った。


『何あんたらキモい』

「たまにはカワイイこと言うじゃねェか、あげはよォ」


自分の言葉を華麗に無視し、笑う高杉にあげはは顔をしかめる。
銀時の奴、晋助たちにさっきのこと言いやがったな。
あげはは銀時の方を睨んだが、彼は顔をそらし口笛を吹いている。とりあえず手元の酒瓶を投げておいた。


「そんなあげはのために俺はいいことを考えたぞ!!」


ドヤ顔で言い放った桂。
こいつにも酒瓶投げでやろーか。むしろこいつを投げてやろーか。…うん、投げよう、とあげはが心に決めた時、


「この戦が終わったらまたこうして五人で花見をしようではないか!!」

『………え、』


思いもよらなかった言葉にあげははぽかんと口を開く。
何より一番この花見を嫌がっていたのは小太郎じゃないか。そんなこいつからまさかこんなことを言われるとは思わなかった。


「ま、そーいうこった。それまで死ぬなよおめーら」

「そーゆーてめぇが一番に死ぬんじゃねーの」

「ヅラは長生きしそうじゃー」

「ヅラじゃない桂だ。貴様の方がしぶとそうではないか」


いまだ唖然としているあげはをよそにいつものようにわいわいと騒ぎ始める四人。


『(戦が終わったら、か…)』


それは何年後なのだろうか。
そんなのわからないが、何年たっても自分たちは変わらないのだろう、とあげはは彼らを見て思った。


『銀時、小太郎、晋助、辰馬、』


あげはの声に騒いでいた四人は静かになる。そして彼女の次の言葉を待った。


『花見。約束だからね!!』




さあっと風に乗って桜が舞った。
これが五人でした最後の花見。


――――…


沢田家、朝。


『おはよー網吉君』

「綱吉ね。それは字だけじゃ分かりにくい間違いだね」


朝からツッコんでくれるツナ。
そんなツナと会話しながらあたしは席について、奈々さんの作ってくれた朝ごはんを口にする。今日は目玉焼きだ。


『…ねえ、ツナー』

「ん?」

『今度お花見しようよ』




桜舞う夜の約束
(ねえ、今でも覚えてる?)


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