***


「あげは?こんなところで何をして………、」

『げ、小太郎』


部屋を出たあたしが一番最初に出会ったのは小太郎だった。小太郎も晋助同様あたしを見て一瞬固まる。
ああ…またこのパターンか。


「…あげは、」


手を握られる。今にもキスしてしまいそうなくらい顔が近づく。
もうやだコレ。なんか恥ずかしいし…。
あたしは小太郎から目線を逸らして素っ気なく返事をした。

『………何』

「結婚s『気が早いわァァァアア!!』…ゴフッ!」


あたしは勢いに任せて小太郎に踵落としを決めた。


『何で結婚だァァ!そこは普通告白からだろ!!イヤ告白されても困るけどね!?』


白目をむいている小太郎に向かって叫ぶ。
…そうだった。コイツに普通は通用しないんだった。


『もう疲れた…』

「あげは?おんしそこで何をしとるんじゃ?」


バッと効果音でも付きそうなくらいあたしは勢いよく振り返る。すでに攻撃ができるような体制にして。


『辰馬……』

「待て待て待て待て!ちょ、何で攻撃態勢ィィ!?わし何かした!?」

『うるさい。元はといえばアンタの仕送りにあんなモンが入ってるから……ってアレ?』


あたしはそこまで言ってあることに気が付く。


『辰馬は何ともないの?』

「ん?」

『いや、あたし惚れ薬というものをうっかり飲んでしまいまして…』

「ああ、アレか」


そういいえばそんなのあったのォ。アッハッハッハ!なんて笑うバカを本気で殴りたいと思った。


「アレはわしには効かん」

『は?何で…?』

「あの惚れ薬は…、」


飲んだ相手の一番身近な人物だけに効果があるき。わしは平気ぜよ。


『………はい?』

「あげはの身近というたらあの三人じゃろ?」

『だったらアンタもそうだと思うけど』


そう言ったら、辰馬は一瞬ポカンという表情を見せた。
あ、この表情珍しいな。


「アハハハハハ!ほりゃあ嬉しいぜよ!!」

『…それで。どうやったらこの薬の効果が切れるの?』

「それなら時間が立てば切れるはずじゃき」

『そ。ならいいけど』


それまでどっか隠れてるかな。
あたしはそう思って辰馬から離れようとする。そこで声をかけられた。


「どうじゃった?惚れ薬は」

『…は?』

「おんし、この間金時たちから女扱いされないと愚痴ってたじゃろ?」

『、あー…まあ、ね』


そんなこと、覚えてたのか。アレは酒に酔って少し言ってしまったバカなことだと思う。
だって…。


『…ダメだね』

「、」

『あたしはあの関係が好きだから』


昔から変わらないあの三人との関係が一番好きだから。そしてもう一人増えた今の関係も。
そうやって笑ったら辰馬も笑い返してくれた。


そんなことがあった攘夷戦争中のある日の話。




いつまでも変わらないで、
(辰馬ァ…何あげはと仲良くしてんだテメー)
(ククッ…よほど斬られたいらしいなァ)
(覚悟はできているな?)
(え?ちょ、ま、ギャアアアアアア!!)
(……薬の効果よ早く切れてくれ)


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