「ここか…」
銀時と高杉はある建物の入り口の前に立っていた。
ここは梨汁組の本拠地。リボーンに場所を教えてもらい、自分たちだけでやって来た。
事情を知ったツナには止められたが。
「(アイツも優しいよなー…)」
心配そうな表情で自分らを見る綱吉の顔はなんだが、懐かしい誰かを思い出させるような気がした。
いや、まさか。あの人とツナは随分と違うじゃないか。
「つまんねェこと考えてんなよ、銀時」
「、ああ。んじゃ行きますか」
二人は木刀を腰に下げ、中へと足を踏み入れた。
***
「ぐあっ」
「何だこのガキ共!」
銀時も高杉も次々と出てくる組の人間をいとも簡単に倒しながら、奥へ奥へと足を進める。実際、今まで迎え撃った奴らは大したことはなかった。
何年も戦場を駆けてきた二人にはこれらを相手にすることなど造作もないことなのだ。
ドガッ
高杉が蹴った男がある一つの扉を突き破った。
そこにいたのは明らかに今までとは異なる雰囲気を纏った男たち。二人は即座にこの男たちがここの幹部、組長なのだと悟った。
「随分とうちを荒らしてくれたみたいだが……。どこの組のモンだ」
一人の男の問いかけに高杉はくつくつと笑った。
「ククッ…どこの組、ねェ……。生憎だが俺達ァそんな甘っちょろいもんじゃねンだよ」
「俺らはどっちかっつーと一般人よりだな。…あ、間違えた。それ俺だけだったわ」
「テメェも一般人じゃねーだろ」
「イヤイヤ、銀さんは立派なパンピーだよ?どっかのテロリストと一緒にすんじゃねーよ」
「上等だコラ」
組長たちを前に喧嘩を始めた銀時と高杉。いつまで待っても終わらない二人のやりとりに痺れを切らした一人が発砲した。
脅しで撃ったのか、二人の方に弾は飛んでこなかった。
ここで撃ってりゃ俺たちのどちらかは仕留められたかもしれないのに。
高杉は撃った男を冷ややかな目で見つめた。
「……何が目的だ」
発砲したことで静かになったのをいいことに、組長らしき男が問うた。
それに対し銀時は頭をかきながら、死んだ魚のような目を男に向ける。
「そーさな…。目的っつーかなんつーか?俺らはお前らが狙ってるっていう女の知り合いでよー」
「女?」
「テメェらんとこの下っ端がナンパ中にその女にやられたらしいじゃねェか」
高杉は心底楽しそうに笑う。それは男たちを馬鹿にしているようにも取れた。
わざわざ挑発するようなこと言うんじゃねーよ、と銀時はため息を一つ。
高杉の言葉でその女が誰なのか分かったのだろう。組長は、ああ、と声を漏らした。
「そうだな…。あのガキは俺たちの仲間をやってくれたんだ。当然報いは受けるべきだろう?」
「ククッ…確かになァ…。だがそれじゃあ俺たちが困る」
「アイツさ。今楽しそうなんだ。それを邪魔しないでやってくれや」
銀時が言い終わったと同時に二人は木刀を構える。
「あの女殺りてェなら……、」
「俺たちを倒してから行けや」
笑った彼ら戦いぶりはまるで鬼のようだった。
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